国家農業政策を見直し (マレーシア)



 マレーシア政府は、 同国の農業政策の根幹となる国家農業政策の見直しを行っ
ていることを明らかにした。 今年5月に発表された第7次5カ年計画との整合を
図りながら、 農業分野に経済原理を取り入れることを中心に見直しが行われる模
様である。

● WTO体制下で必然的な見直し


 国家農業政策は、 農業分野発展のための長期計画として策定され、 1992年から 2010年までの19年にわたる同国の農業政策の根幹となっている。  しかし、 計画開始から約5年を経過した現在、 世界貿易機関 (WTO) の発足に 伴い、 新たな農産物の国際貿易に関するルールを確立する必要性が生じるなど、 農業を取り巻く環境は、 計画立案当時の90年代初頭から大きく変化した。  このような中で、 マレーシア政府は、 当該政策によって農業者の所得が向上し たことなどを評価しながらも、 一方では、 農業を取り巻く環境の大きな変化に対 応するため、 国家農業政策の見直しを行っていることを明らかにした。

● 国内の労働力不足の解決が課題


 マレーシアは、 日本とほぼ同じ国土ながら人口は約2千万人に過ぎないため、 国内労働力が大幅に不足しており、 密入国を含む外国人労働者が150万人に達し ているともいわれている。 このため、 労働力の不足を解決することが、 国として の大きな課題の一つとなっており、 他産業と比較して所得水準の低い農業分野は、 特に、 深刻な労働力不足に見舞われている。  今年5月に発表された第7次5カ年計画 (1996〜2000年) では、 この問題の解 決を目指し、 農業生産規模の拡大と機械化の促進が打ち出された。  同計画は、 農業分野に経済原理を取り入れて活性化を促し、 また、 安易に外国 人労働者に頼るのではなく、 農業生産の大規模化と機械化を推進することで、 労 働力不足の問題を解決するとしている。 また、 最新の農業技術と機器の導入を進 め、 資源の有効活用を通じて生産性を改善させるためにも、 これらの効果が最大 限発揮できる生産規模に拡大することが重要であるとしている。

● 新たな国際環境への適合を画策


 さらに、 生産性の改善と向上は、 農産物の国際競争力の強化につながり、 WTO 体制下で貿易障壁が削減された場合にも、 国内農業生産を維持することができる としている。 逆に言うと、 小規模農業は、 大量消費を前提とした経済の要求に対 応できず、 かつ、 新しい農産物国際貿易の環境にも適合できないとする認識が根 底にある。  今回、 国家農業政策は、 このような第7次5カ年計画の方向性に沿って見直し が行われ、 2010年までの長期計画として再編される模様である。 マレーシアの農 業は、 国際的経済的環境の大きな変化を受け入れることを求められている。
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