米国の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○アルゼンチン産牛肉の輸入解禁と牛肉市場への影響



● USDAが輸入解禁の影響を分析


 米国は、 8月にアルゼンチンからの生鮮、 冷蔵および冷凍牛肉 (以下 「生鮮等
牛肉」) の輸入を解禁 (本号 「トピックス」 参照) するが、既に輸入されている調
整品等の近年の輸入量をみると、 缶詰めのコーンビーフやソーセージ等を中心に、 
93年は3万9千トン、 94年は3万4千トン、 95年は4万2千トン、 96年は3万7
千トンと、 毎年安定的に輸入されており、 輸出ポテンシャルがあることが分かる。 

アルゼンチンからの輸入量

 資料:USDA「US Trade and Prospects」

 一方、 生鮮牛肉等については、 衛生検疫条件が満たされることを条件として、 
先のウルグアイ・ラウンド交渉において、 米国はアルゼンチンに対して、 2万ト
ンの関税割当を行なうことに合意していたが、 米農務省 (USDA) は、 解禁への検
討と併行して、 生鮮等牛肉の輸入による影響の分析を行った。 

● 大洋州産牛肉と競合か


 その結果、 2万トンの関税割当枠は、 そのすべてが輸入実行されたとしても、 
消費量全体からみるとわずか0.2%にすぎないことから、国内の牛肉市場への影響
はほとんどないと分析している。 

 また、 輸出が見込まれる牛肉はグラスフェッド牛肉であるため、 ハンバーガー
などの加工用に向けられると考えられることから、 影響があるとすれば、 テーブ
ルミート向けの国産グレインフェッド牛肉ではなく、 肥育されない乳用種や豪州、 
ニュージーランドから輸入される牛肉などと競合するものとみている。 

● アルゼンチンの肉牛生産の現状と今後の可能性


 アルゼンチンでは、 牛肉生産はアンガス種などを中心とした肉用種がベースと
なっているが、 飼養頭数は約5千万頭余りで、 米国の飼養頭数の約5割程度とな
っている。 また、 飼養形態は、米国のテーブルミート向けのような穀物肥育牛(グ
レインフェッド牛肉) ではなく、 豪州やニュージーランドと同様に、 牧草で飼育
されるグラスフェッド牛肉となっている。 しかしながら、 今後、 アルゼンチン産
生鮮牛肉等の輸入を解禁する国が増えれば、 自国産やブラジル産の安価で潤沢な
穀物資源を活用したフィードロット産業が発達し、 グレインフェッド牛肉を世界
市場へ輸出する可能性もあるとみる牛肉業界関係者もいる。 

 また、 アルゼンチンの96年の総牛肉輸出量は46万トンであるが、 同政府関係者
は、 2000年には80万トンに達すると予測しており、 米国による輸入解禁の効果に
大きな期待を膨らませている。 


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