EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○主要生産国の飼養頭数は引き続き増加



● ドイツ、 フランスなど引き続き増加


 97年4月期の豚飼養に関するセンサスによれば、 主要豚肉生産国の総飼養頭数
は、 前回 (96年12月期) のセンサスに引き続いて、 各国とも軒並み増加となった。 

 このうち、 EU最大の豚肉生産国であるドイツの総飼養頭数は、 今年に入って発
生した豚コレラの影響が懸念されていたにもかかわらず、 今回のセンサスでは、 
対前年同期比3.6%増の約2,441万頭となった。 また、 第3位の生産国 (96年は、 
約215万トン:暫定値) であるフランスも、 3.4%増の約1,538万頭となった。さら
に、 主要な豚肉輸出国であるデンマークでは、 3.4%増の約1,070万頭、 イギリス
では、 5.4%増の約773万頭となった。 

 また、 これらの国では、 繁殖用雌豚の飼養頭数についても押しなべて増加傾向
にあり、 このことは、 今後も、 肉豚供給の増加傾向が続くことを示唆している。 
ちなみに、 繁殖用雌豚の増加率は、 ドイツとフランスがいずれも1.6%増の約257
万頭、 約153万頭であったのに対して、輸出が好調で意欲が高まっているデンマー
クは、 3.9%増と両国を大幅に上回っている。 また、イギリスは、牛海綿状脳症(BS
E) 問題による需要のシフトや輸出の増加により、 5.6%増と最大の増加率を示し
た。 

97年4月期主要生産国別豚センサス

 資料:イギリス食肉家畜委員会
    「European Market Survey」

● 豚コレラの影響による需給ひっ迫が背景


 このように、 主要生産国の豚の飼養頭数が引き続き拡大した背景には、 今年に
入ってから、 主要な生体豚の輸出国であるオランダ (豚肉を含めると、 EU最大の
輸出国) を中心に発生している豚コレラの影響で、 豚肉需給がひっ迫したことが
挙げられる。 これにより、 昨年の秋から低下傾向にあった豚肉価格が2月中旬以
降、 急上昇したため、 BSE問題による牛肉からの需要シフトにより、既に恩恵を受
けていた肉豚生産者の増頭意欲を、 再び刺激する形となった。 

 ちなみに、 デンマークの枝肉取引基本価格は、 オランダからの不足分を埋め合
わせる形で引き合いが急増したことから、 5月中旬には、 14.4クローネ(約253円) 
/kgと対前年同期比4割高となった。 

● オランダ、 豚コレラの影響は来年まで続く見込み


 現在、 オランダでは、 豚コレラの発生が依然として続いており、 豚 (子豚を含
む) の介入買い上げなどの豚コレラ関連対策が取られている (本号の“トピック
ス”参照)。 こうしたことから、 同国の食肉家畜ボードによると、97年第2四半期
の食用の豚のと畜 (介入買い上げの豚は、 食用に供されない) 頭数は、 前年同期
に比べ、 44%にまで減少したとされる。 

 一方、 急上昇した豚肉価格は、 主要生産国で飼養頭数が増加傾向にあることに
加えて、 1)価格急上昇の反動から市況が反落したこと、 2)冷夏で、 ハムなどの季
節的な需要が伸び悩んでいることなどにより、 昨今では沈静化しつつある。 

 しかしながら、 ドイツ市場価格情報センターによれば、 97年4月から98年3月
までのオランダの豚のと畜頭数は、 今後の豚コレラ対策の進展により、 前年同期
より約7百万頭 (EUの全肉豚供給量の3%〜4%)減少の約1,630万頭になると予
測している。 したがって、 オランダからの豚肉の供給減少が、 今後もしばらくの
間、 EUの豚肉市場動向に影響を及ぼすものと予想される。 


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