◇絵でみる需給動向◇
台湾の口蹄疫は、 ワクチン接種および発生農家における全頭と畜処分などの防 疫対策が順調に進んでいることから、 6月中旬以降では、 台南県および屏東県で 数例の発生が確認されたのみである (7月10日現在)。 全体的な傾向としては沈静化に向かっているものの、 今後の散発的な発生も予 想されることから、 未だ予断を許さない状況となっている。
そうした状況下で、 肉豚卸売価格は6月中旬以降、 口蹄疫発生直前の水準 (4 千5百元〜5千元程度:生体100kg当たり) に回復し、その後も安定的に推移して いる。 口蹄疫の被害による死亡にと畜処分を加えると台湾の豚総飼養頭数の約1 /3に当たる385万頭の豚が失われたことから、出荷頭数の大幅な減少が当分は続 くと考えられるため、 今後も肉豚価格は堅調に推移すると見られている。
こうした中、 6月末日には92年度から実施されていた6年計画の養豚政策法令 が終了し、 今後4年間の養豚政策に係る新法令が近いうちに施行される模様であ る。 新養豚政策法令は、 その策定時期に口蹄疫問題が起こったため、 いかにして その損害から養豚産業を再建していくかに比重が置かれたものとなっており、 そ の効果に大きな期待が寄せられている。 新法令の基本方策は、 当分の間は、 非汚染国への輸出が不可能となることを前 提としつつ、予定されるWTO加盟を考慮に入れた養豚体制の再構築を目指した内容 となっている。 農業委員会 (農業省に相当) によると、 零細な養豚は経営効率が 悪いばかりでなく、 伝染病の防疫措置を遂行していく上で不利となることから、 今後4年間で、 養豚戸数を現在の2万5千戸から1万5千戸に減らすことで、 飼 養頭数100頭以上の養豚場の比率を現在の49%から60%に高めるとしている。併せ て、豚肉輸入の自由化に備え、 生産コストを現在の4,600元/頭から4千元以下に 引き下げることも挙げられている。 また、 以前からの懸案事項であった環境保全にも言及しており、 水源水質保護 地区内にあっては養豚を一律禁止とし、 既存の養豚場に対しては、 業務停止及び 移転を指導するとしている。 なお、 全ての養豚場は、 規模の大小を問わず廃水処 理施設の設置が義務付けられることになる。
高水準の豚価に刺激されて、 養豚を停止した農家の再開意欲が高まりつつある と伝えられているが、 口蹄疫で保有豚の全てをと畜処分した農家が養豚を再開す る場合には、 必ず所定の消毒手順等を踏んだ上で農政機関の監督、 許可を受けな ければならないとされている。 これに対して農政機関は、 養豚再開にあたっての 指導事項を提示するまでは、 無許可で飼育を再開することのないよう農家に留意 を促している。 現地報道によれば、 7月1日から養豚再開申請が可能となり、 再 開の条件に適合する農家は早ければ8月から正式に養豚が再開できるとみられて いる。 しかしながら、 母豚や子豚の手当てをいかに行うかという大きな問題を打 開せねばならず、 資金調達も含めて、 厳しい環境下での養豚再建への模索が続く ものとみられる。
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