米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○豚の飼養頭数が増加に転じる



● 前年同期を上回る飼養頭数


 米農務省が発表した97年6月1日現在の豚の飼養頭数 (センサスは3ヵ月ごと) 
は、 前年同期を1.7%上回る5,815万頭となった。 飼養頭数の内訳を見ると、 肥育
豚頭数は前年同期に比べ1.7%増の5,120万頭、 また、 繁殖豚頭数は前年同期比1.
2%増の695万頭となり、 それぞれ前年水準をわずかに上回る結果となった。 また、 
今後の分娩予定頭数については、 97年6月〜8月期は前年同期を5.4%、 また、9
月〜11月期では6.3%、 それぞれ上回ると見込んでいる。 

 豚の飼養頭数は、 95年6月以降、 他の食肉の供給が増えたことや飼料高騰によ
る収益の悪化などから、 一貫して前年水準を下回って推移してきた。 しかし、 今
年3月に台湾で豚の口蹄疫が発生したことから、 台湾産の代替需要分が加わって、 
日本への輸出が急増したことや、 飼料コストの低下により収益か回復したことな
どを反映して、 今回センサスでは、 2年ぶりに増頭傾向に転じたものと思われる。 

● 中西部では引き続き減少傾向に


 州別に飼養頭数を見ると、 全米最大の生産州はアイオワ州で、 続いてノースカ
ロライナ州、 ミネソタ州、 イリノイ州、 ネブラスカ州となっており、 その順位は
前年同期と全く同じとなった。 これら上位5州は、 全米総飼養頭数の6割強を占
めているが、 伝統的な豚生産州では、 ミネソタ州を除き減少傾向が進んでおり、 
アイオワ州やイリノイ州では、 それぞれ前年同期に比べ0.8%減、 4.3%減となっ
た。 一方、 大手パッカーによるインテグレーション経営が展開している新興生産
州であるノースカロライナ州は、 前年同期に比べて9.5%の増加となり、大規模経
営による生産拡大を反映した結果となった。 また、 その他の州で大幅な増加が見
られたのはオクラホマ州で、 肥育、 繁殖用共に急増し、 総飼養頭数は前年同期に
比べ30.4%増となった (なお、 同州の頭数は150万頭で第9位)。 

上位5州の豚飼養別動向(97年6月1日現在)

 資料:USDA「Hogs and Pigs」

 近年、 米国の養豚業界では、 企業経営による規模拡大が進行する一方で、 小規
模な農家経営の廃業が進んでいることから、 農家経営を主体とする伝統的な養豚
地域から、 新興養豚地域への生産地域の移動が見られている。 このため、 伝統的
な養豚地域である中西部では、 パッカーへの生体豚の供給が減少し、 食肉工場の
と畜能力が余剰気味になるという影響が生じている。 

● カナダ西部からの生体豚輸入が増加


 こうした状況下で、 近年、 カナダからの生体豚の輸入が盛んに行われており、 
米国側での豚肉産業立地と関連する地理的条件などから、 アルバータ州やマニト
バ州などのカナダ西部からの輸入が増加している。特にマニトバ州については、ア
イオワ州が輸入するカナダ産生体豚の大半を同州産が占めるとされており、 米国
中西部への生体豚輸出が年々拡大している。 米国、 カナダは、 北米自由貿易協定 
(NAFTA) に加盟し、 両国間の物資の移動は比較的容易に行われており、 今後、 こ
うした2国間流通が増加するものと思われる。 

元のページに戻る