干ばつへの懸念が再燃 (豪州)



● エルニーニョ現象により降水量が減少か

 豪州気象局は、 タヒチとダーウィン (豪州北西部) の気圧差を示す南方振動の 指数 (SOI)が今年に入ってマイナス値を示していることから、今後の降水量は、例 年を3割程度下回る可能性が高いとの見解を発表した。  ちなみに、SOIは、南米太平洋岸にみられるエルニーニョ現象と連動しており、SO Iが大きなマイナスを示した場合には、この現象が発生するとされる。 過去にエル ニーニョ現象が本格化したときには、 豪州では東部を中心に深刻な干ばつに見舞 われたケースが多く、 今回の発表は農業関係者に大きな影を落としている。

● 干ばつが発生すれば肉牛、 酪農産業に影響

 豪州気象局の発表後、 特に肉牛部門では、 生産者の干ばつへの懸念が、 素牛の 導入意欲の低下という形で顕著に表れている。 ニューサウスウエールズ州などの 一部の生体市場では、 素牛の需要減少から価格が低下していると伝えられており、 先行きの不安によって市場にも影響が出始めている。  エルニーニョ現象は、 世界の気象に大きな影響を与えることで知られているが、 82年から83年にかけての今世紀最大規模のエルニーニョ発生時には、 豪州は大干 ばつに見舞われた。 また、 90年秋から95年半ばまで断続的に発生した際には、 主 要な肉牛生産地帯であるクインズランド州とニューサウスウエールズ州北部を中 心に干ばつが長期化し、 肉牛生産に大きな損害が及んだ。  現在のところ、 雨不足は、 ビクトリア州北東部 (ギプスランド) 地域にほぼ限 定されている。 しかしながら、 豪州の主要酪農地域でもあるこの地域では深刻な 飼料不足に直面しており、 生乳生産量にもかなりの影響が出ていると伝えられて いる。  この他の地域では、 ニューサウスウエールズ州で、 4月の降水量が記録的な低 水準となったものの、 その後、 5月に入ってからは、 各地域とも全般的に降雨に 恵まれたため干ばつの兆しはみられていない。

● 生産者への心理的な影響が大

 なお、 豪州資源経済局が6月に発表した農作物の収量予測では、 冬作物の作付 け面積はほぼ前年並みを確保したとしているものの、 エルニーニョの発生で降雨 が不足した場合には、 小麦収量で1ヘクタール当たり約270キロ (16%)の減収と なると予想している。  現時点で広範囲に干ばつが発生しているわけではないが、 豪州の農業は歴史的 に 「干ばつとの戦い」 でもあるだけに、 今回の発表が、 生産者に与えた心理的な 影響は大きいと考えられる。 生産者の懸念を打ち消すためにも、 今後の恵みの雨 が待たれるところだ。
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