96年の生乳生産、 高い前年比伸び率を達成 (中国)




● 前年を8.4%上回る

 国家統計局の公報によると、 96年の生乳生産量 (牛の乳)は625万トンで前年比
8.4%増と、 前年の増加率 (9%)を若干下回ったものの連続して高い伸び率を示
した。 総食肉生産量の伸び率が10.3%と6年連続二ケタ台を記録したのに比べる
と若干低いが、 生乳生産は93年には 「足踏み」 状態となったことから、 その意味
では、 ここ2年は順調な生産拡大傾向を示したということができる。 

 また、 牛の乳に他の家畜の乳を加えた総生乳生産量を、 96年以前5年間の平均
生産比率 (牛の乳が88%を占める) を用いて推計すると、その生産量は約710万ト
ン*と見積もられる。 なお、 この推計が実態を正確に反映しているとすれば、 史
上初めて700万トン台を達成したことになる。 

〈生乳生産量の推移〉

 (注)1 資料 96年以外は中国統計年鑑  2( )内は前年比
    3 その他の家畜の乳は主に羊、ヤギの乳(牛の乳にヤクが含まれるか
      否かは不明)


● 依然として低水準の一人当たり消費量

 生乳生産の拡大は順調であるものの、 その12億を超える人口規模からみると、 
生乳ベースの一人当たり国内供給量は5.1kg (牛の乳:生産量÷人口)と、 依然と
して低い水準に止まっている。 この水準は、 わが国 (約69kg:同上) はもちろん
のこと、 韓国の約45kg (FAO資料より:同上)と比べても、 著しく低い水準である。 
なお、中国は乳製品等を輸入しているが、品目別数量の把握が困難であるため、 消
費量の正確な計測は困難である。 しかしながら、 人口 (約12億) に比べると輸入
量が極めて少ないことから、 国内供給量に輸入量を加えても、 一人当たり消費量
が大きく増えることはないと考えられる。 

 こうした低い国内供給量の水準は、 主に、 次の要素により生じているものと考
えられる。 

1) 伝統的に農業の主体が畑作・水稲耕作であること

2) 生乳生産が、 かっては遊牧民が多く人口希薄な北部・西部地域に偏っていた
 こと

3) 1)の農業事情と不可分の関係にある、 油脂供給の面での乳脂肪への依存度の
 低さ

 したがって、 輸入の中心は、 還元乳類(水又はお湯で溶いて飲用とするもの)の
原料として、 全粉乳を中心とした粉乳類がその中心を占めてきた。 

〈新製品等輸入量の推移〉

 (注)1 資料 中国税関統計  2( )内は前年比


● 需要の拡大と酪農・乳業の振興政策

 しかしながら、 経済成長による所得向上が著しい昨今では、 需要が急拡大して
いる良質の栄養源又は嗜好品として、 また、 主産地では農家収入向上のための成
長部門として、 中央政府は酪農・乳業を重視しており、 黒龍江省ほかの10大振興
地域を中心に、 生乳生産の拡大、 乳業企業の誘致・育成などに力を入れている。 
こうした需要の急拡大と政策的テコ入れが、 生乳生産が持続的に増加している背
景である。 

 また一方では、 全国的な流通システムが未整備であることや、 供給余力のある
生産地が限られるという問題から、 北京や上海など需要が急増する沿海部の大都
市では、 近郊での酪農・乳業の振興が図られている。 こうした、 大都市近郊での
生産振興の取り組みもまた、 近年の生産増を支える要素の一つである。 

● 価格制度や資金調達が自給達成の課題に

 なお、 統制性の強い全国共通の酪農・乳業制度といったものは、 現在では存在
しないようである。 今日の酪農・乳業政策の基本は、 1)生産振興を通じての自給
方針の堅持 (第九次五ヶ年計画では、 2000年の一人当たり供給目標は8kg) と、 
その実現のために、 2)酪農家所得確保の目的で、 地方行政が生産者乳価に何らか
の形で介入する仕組み (最低価格や基準価格の設定など) である。 

 こうしたことから、 生産振興の面では、 乳牛・農地や機械・設備等への投資、 
また、 技術移転や生産者・乳業者の教育・訓練等に多額の資金と時間がかかるこ
とが、 今後の課題となりそうである。 また、 乳業メーカーにとっては、 市場経済
化により牛乳・乳製品が価格競争にさらされつつあるのに対して、 原料乳価格の
方は固定的であることが今後経営上の課題になると思われる。 


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