◇絵でみる需給動向◇
EUの統計によれば、 96年の域外向け牛肉輸出量 (生体牛、 調整品を含む) は、 対前年比7.9%減の110万4千トン (枝肉ベース) となった。 輸出量が減少 した要因としては、 何と言っても、 同年3月にイギリスで発生した牛海綿状脳症 (BSE) に関する問題が挙げられる。 これを、 牛肉と生体牛別に前年からの変化をみると、 冷凍、 冷蔵牛肉が2.6 %の減少にとどまったのに対して、 生体牛は28.2%減と大幅な減少率となっ た。 これは、牛肉については、 BSE問題に伴うイギリスの禁輸による減少分を他の 加盟国が埋め合わせたのに対して、 生体牛については、 その大部分を占めるアイ ルランドへの引き合いが、 少数ながら同国でBSEの発生が見られたことから、忌避 される傾向が強まり、 かつ、 これを埋め合わせる国がなかったことによるもので ある。 なお、 輸出された牛肉の内訳を見ると、 冷凍、 冷蔵牛肉が全体の79.6%に 当たる87万9千トン、 調整品が7.8%の8万6千トン、 また、 生体牛が12. 6%の13万9千トンとなっている。 輸出国別の牛肉等の域外向け輸出量 資料:EU委員会 (注) 96年の数値は暫定値、カッコ内は対前年比である。
次に、 輸出国別の状況を見ると、 BSE問題の震源地となったイギリスは、96年 3月以降、 牛肉輸出が禁止されたことから、 対前年比76%減の1万6千トンと 大幅な減少となった。 さらに、 EU最大の域外輸出国であるアイルランドも、BSE問 題の影響を強く受け、 対前年比23.1%減の31万7千トンに落ち込む結果と なった。 これに対して、 オランダ、 デンマーク、 イタリアなどの輸出量は、 対前年比で 2桁を越える伸びを示しており、 特に、 デンマークが31%増、 イタリアが38 %増など目立った伸びを示している。 これは、 輸入国側が、 イギリスからこれら の国々に調達先を切り替えたためと考えられる。
一方、 EUからの仕向先別の牛肉輸出量を見ると、 地理的に近いロシアを含むEU 以外の欧州向けが52%と過半を占め、 次いでアフリカ諸国向けが29%、 中東 およびアジア諸国向けが18%となっている。 特に、 ロシア向け輸出量は、 総域 外輸出量が減少する中で、 対前年比26.4%増の34万8千トンと際立った増 加をみせ、 全体のシェアでも3割以上を占めるに至っている。 これは、 ロシアで は、 経済改革により新富裕層が形成されつつあり、 一部で牛肉需要の伸びが見ら れるのに対して、 国内生産は、 依然として不振を極めたことによるものと考えら れる。 EUからの仕向け先別の牛肉輸出量 資料:EU委員会 (注) 96年の数値は暫定値、カッコ内は対前年比である。
また、 97年に入ってからの牛肉輸出量 (主要6カ国 (ドイツ、 フランス、 イ ギリス、 オランダ、 アイルランド、 イタリア) ;調整品、 生体牛を含まない。 製 品重量ベース) は、 各月によって変動はあるものの、 ほぼ前年を上回る水準で推 移してきた(左図参照) 。 97年1〜7月の当該輸出量は、 BSE問題により落ち込 んだ前年同期と比べると約2割増となっているものの、 2年前の水準と比較する と、 依然として、 約6%の減少となっている。 今後のEUの牛肉輸出に関しては、BSE問題による市況低迷により60万トンを超 えるまでに膨らんだ介入在庫の処分問題と、 イギリス産の輸出解禁問題が課題と して残されており、 域内はもとより、 世界的な視野からも、 それらの動向を注視 する必要がある。
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