硝酸塩汚染防止対策に大幅な遅れ (EU)




● 95年12月までに汚染防止対策を策定

 EU委員会は、 10月1日、 硝酸塩による水質汚水防止を定めたEU指令(以下「硝
酸塩指令」 と言う。 ) の実施状況に関する報告を発表した。 

 硝酸塩指令は、 農業生産活動に由来する硝酸塩による水質汚染を防止する目的
で、 91年に採択された。 これにより、 加盟国は、 93年12月までに、 (1)必
要な国内法の整備、 (2)硝酸塩による水質汚染の発生地域、 あるいはその恐れの
ある地域の指定 (基準値硝酸塩50mg/リットル) 、 (3)汚染防止のための優良
農法に関する基準 (指定地域内では義務、 その他の地域では任意) の策定などの
措置を取ることが求められた。 また、 95年12月までに、 (4)指定地域内の汚
染防止のためのアクション・プログラム (ふん尿貯蔵施設設置や、 ふん尿散布量
の制限などの義務化) を策定することも求められた。 


● EU委員会、 実施状況は極めて不十分と指摘

 今回のEU委員会の報告で示された、 本年7月末現在の実施状況は、 以下の通り
極めて不十分なものとなっており、 汚染防止体制の整備が大幅に遅れていること
が明らかになった。 

1 国内法の整備:十分な法整備が完了したと判断される国は、 デンマーク、 フ
 ランス、 ルクセンブルクおよびスペインの4カ国のみとなっている。 

2 地域指定:オーストリア、 デンマーク、 ドイツ、 ルクセンブルクおよびオラ
 ンダが国土全域を指定している。 また、 スウェーデンおよびイギリスは一部を
 指定、 また、 アイルランドは該当地域なしとしたが、 EU委員会は、 現在、 それ
 らの判断が適正であるかどうかについて調査中である。 なお、 他の加盟国では、 
 まだ指定が行われていない。 

3 優良農法に関する基準:ベルギー、 ポルトガルおよびスペインを除いて策定
 されている。 ただし、 策定されたものでは、 一部に内容の不備が見られるなど、 
 今後精査が必要な状態である。 さらに、 同等の環境条件下にある地域における
 同基準の相互比較検討も必要である。 

4 アクション・プログラム:同プログラムは、 硝酸塩指令の実効を上げるため
 のカギとなる事項であるにもかかわらず、 策定が行われた国は、 オーストリア、 
 デンマーク、 ドイツ、 ルクセンブルクおよびスウェーデンのみである。 その中
 では、 ドイツおよびルクセンブルクのプログラムが、 EU指令に則していないと
 既に判断されており、 かつ、 他の国についてもその点について調査中である。 


● EU委員会、 可能な限りの実施促進を目指す

 EU委員会は、 この硝酸塩指令が求める立法措置や基準作り等の大幅な遅れに対
処する措置の一環として、 情報公開規則に基づき、 特に問題とされる10カ国に
対して取った行政上の措置 (訴訟を含む) を公表した。 これによると、 EU委員会
は、 ギリシャ、 イタリア、 ポルトガル、 スペインといった南欧諸国との間で、 国
内法の整備や地域指定などの実施の遅れに関して、 現在、 EU裁判所で係争中であ
る。 また、 同委員会は、 フランス、 アイルランド、 スペインに対しても、 それら
の事項について、 同裁判所に提訴する準備を進めている。 

 EU委員会は、 硝酸塩汚染対策の実施の遅れについて、 環境保全や公衆衛生上深
刻な問題であり、 今後可能な限りの手段を講じて、 迅速な実施を促していくとし
ている。 



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