タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○飼料原料の輸入政策を改訂


 

●生産拡大が一服し、 在庫調整中



 政府統計によると、 ここ数ヶ月間の生産拡大は非常に急激なものであった (図
−1)。 この結果、 10月に入って鶏肉価格が低下 (図−2) したため、 業界は急
遽、 生産調整を実施、 ひな餌付け削減によって価格回復を実現させた。 その後は
生産拡大が一服し、 旧正月の需要期が過ぎた現在は在庫の調整中であるといわれ
ている。 

 タイ国内のブロイラー需要は着実に増加しつつあるが、 国内生産量のほぼ2〜
3割を輸出に回し、 生産能力の2割近くも生産調整を実施した経験をもつ業界に
とっては、 さらに一段の国内消費の拡大を期待したいところである。

●飼料原料輸入政策の改訂を繰り上げ実施



 97年の飼料原料輸入政策に関して、 タイ政府がWTOルールに準拠した新たな制
度を創設したことは本誌10月号に部分的ながら記載した。 新たな制度は10月15日
に閣議決定され、 97年1月1日施行の予定であった。 ところが大豆ミールの緊急
手当てが必要という業界の要請と、 タイ産品の輸出不振から打開策を探っていた
政府の思惑が一致、 施行が11月1日に繰り上げられた。 主な変更点は次のような
ものである。 

 (1)大豆ミールは、 輸入割当制度を廃止し、 関税を15%から10%に削減、 国内
産については、 8.5バーツ/kg (工場出し価格、 1バーツ=約4.8円) 以上での全
量買い入れ義務を課した。 (2)大豆は、 関税率を0%に削減する代わりに、 国内
産の8.5バーツ/kg (工場持ち込み価格) または8バーツ/kg (産地価格) 以上
での全量買い入れ義務を課した。 (3)トウモロコシは、 輸入割当制度を廃止し、 
輸入時期を国内端境期に当たる2月20日から6月30日までに限ったうえで、 国内
産の買い入れ価格がキロ当り4.5バーツ以上となった場合は関税率を0%に、 3.8
バーツ以上の場合は20%に、 3.8バーツ以下の場合は政府が価格支持を行うこと
とした。 (4)魚粉は、 輸入課徴金をトン当たり1,400バーツから350バーツに引き
下げるが、 関税率は6%を15%に引き上げる。 

 なお、 これらの飼料原料の輸入業者は、 飼料協会、 大豆ミール輸入・取引業者
協会、 畜産団体 (養鶏振興協会、 ブロイラー加工輸出業者協会、 ブロイラー輸出
生産者協会、 アヒル生産処理輸出業者協会、 養豚業者協会) の8団体に限定され
ている。 

 これに対し、 大手生産者であるサハファームの社長は、 今回の措置によって、 
ブロイラーの生産コストが30%も低下する効果があると政府の決定を歓迎し、「こ
れによって、 サハ社の生産コストは、 日本市場で中国産ブロイラーと競合できる
まで低下する。 さらに、 多くの畜産物価格も低下し、 政府の重視する消費者物価
動向にも好ましい効果を及ぼすはずである。 」 と述べている。

●実行面では今後も紆余曲折か



 ところが、 この制度にも幾つかの問題点が指摘されている。 例えば、 トウモロ
コシに関しては、 国内価格が4.5バーツ以上の時に多量に輸入しておき、 国内産
に対しては新制度のいう 「良質な」 という点を逆手に品質面での条件を多発し、 
結果的に買い取りを拒否するというものである。 ちなみに、 輸入解禁となる2月
20日が近づいている中で開催された1月14日の閣議では、 国内産の売り渡しが完
了するまで解禁日を遅らせることと、 解禁日を商務大臣に一任すること、 下限価
格とされた3.8バーツの引き上げを行うことが決定された。 

 今回の飼料原料輸入政策の改訂は、 改訂内容が大幅であるだけに、 定着までに
は今後とも紆余曲折が予想される。

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