◇絵でみる需給動向◇
96年に入ってから低迷していたEUの域内バター価格が、 昨秋以降顕著な回復傾 向を示している。 域内の指標価格の一つであるオランダの取引価格 (ブランドバ ター) は、 96年9月に6.6ギルダー (約440円) /kgと底を打った後、 10月から上 昇に転じた、 97年1月には、 6.9ギルダー (約460円) /kgとなり、 前年同月と比 べると、 依然として低い水準 (−4.6%) ながら、 96年9月に比べると、 4.5%の 値上がりとなった。
この価格の回復の原因は、 昨秋以降、 生乳生産量およびバターの生産量が減少 している (96年12月は、 対前年同月比1.2%減) 中で、 EUの主要輸出先であるロ シアなどCIS (独立国家共同体) 主要国向けの輸出が回復していることにある。 これらの国々では、 96年に入ってから高率インフレが収束して民生の安定傾向が 出始めており、 さらに外貨事情が改善傾向にあることなどから、 輸入需要が増加 しつつある。 なお、 ロシアなど主要相手先への輸出が回復したことは、 バターの域外向け輸 出価格にも反映されている。 ドイツ市場価格情報センター (ZMP) によると、 97 年1月のEUのバターの輸出価格 (西欧主要積み出し港の本船渡し価格) は、 1,90 0米ドル (約23万3千円)/トンとなり、 価格が最も低下した96年11月の1,700米 ドル (約20万8千円)/トンに比べると、 11.8%の上昇となった。 一方、 域内のバターの消費動向に関する、 オランダデイリーボードの調査によ ると、 EUの一人当たりバター消費量は、 消費者の健康意識の高まりなどから80年 代から90年代前半にかけて減少傾向で推移したものの、 近年、 消費者がバターが 持つ本来の味わいを見直してきたことなどにより、 徐々に回復する見込みである とされている。 また、 オーストリアやフランスなどでは、 既にその兆候が明らか になっていることが指摘されている。
こうしたEU域内外における需要面の好転により、 EUが、 バターについて夏期の 過剰と冬期の不足を調整する目的で行っている民間在庫補助制度 (企業が、 一定 の期間バターを在庫保管する場合に、 その経費に対して、 補助金を交付する制度) に基づく在庫数量は、 10月末の約14万4千トンから1月半ばには約4万1千トン へと、 大幅に減少した。 また、 介入在庫量も、 10月末の約4万4千トンから1月 半ばには約3万9千トンに減少した。 また、 一方では、 生産が急増する要素は見当たらないだけに、 97年のEUの域内 バター価格は、 今後も上昇基調で推移することが見込まれる。
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