◇絵でみる需給動向◇
先ごろ発表されたデンマーク統計局の12月期の豚センサスによると、 同国の豚 の総飼養頭数は、 対前年同期比3.5%増の約1,108万頭となり、 8月、 10月期のセ ンサスに引き続き対前年比で増加となった。 この内訳を見ると、 繁殖用雌豚頭数 のうち、 経産豚の頭数が対前年同期比4.7%増、 また、 未経産雌豚の頭数が同9.6 %増となり、 いずれも全体の伸び率を上回った。 繁殖用豚群の拡大傾向が強く表 れたことは、 同国の肉豚供給が、 今後、 さらに増加傾向に向かうことを明瞭に示 すものとなった。 表 96年12月期デンマーク豚センサス 資料:イギリス食肉家畜委員会 「European Market Survey」 注:( )内は、内数
このように、 デンマークの豚飼養頭数が拡大した原因は、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題の新たな展開により、 96年3月以降、 牛肉から消費がシフトして域内の豚肉 需要が増加したため、 肉豚価格が急騰して秋口まで高水準で推移し、 生産者の増 頭意欲が刺激されたことにある。 同国の豚肉生産委員会の発表によれば、 96年の肉豚生産者の平均純利益 (税引 き前) は、 この価格の高騰による恩恵を受け、 環境対策に必要な経費などが上昇 していることなどにもかかわらず、 52万5千クローネ (約1千40万円) と、 前年 に比べると49%の大幅な増加になる見込みとなった。 なお、 デンマークは、 EU15カ国中第5位の豚肉生産国 (96年は、 生産量約153 万トン:暫定値) であるが、 国内の需要規模が小さいことから、 オランダと並ん で主要な豚肉輸出国となっている。 近年、 同国は、 生産量の約6割 (製品重量ベ ース) を輸出しているが、 その5割以上をEU域内に輸出している。 域外輸出につ いては、 近年、 輸出補助金が削減されたことや、 主要な輸出先の一つであった旧 ソ連への輸出が不振であることから、 その拡大は容易でない。 したがって、 同国 の生産動向は、 域内の豚肉市況に大きな影響を及ぼすものとなっている。
そうした中、 現在、 デンマークの肉豚生産者を取り巻く状況は、 厳しいものと なりつつある。 域内の豚肉価格は、 牛肉消費が徐々に回復傾向にあることなどか ら、 秋以降は一転して下落傾向を示している。 これに伴って、 同国の豚肉価格も 低下を続けており、 97年1月の価格は、 10.14クローネ (約201円) /kgとピーク 時となった96年9月の12.33クローネ (約245円) /kgに比べると、 17.8%の低下 となっている。 なお、 これは前年同月並みの水準である。 この状況を打開するために、 デンマークは、 スウェーデンなどの新たな域内市 場の開拓に乗り出している。 近年、 スウェーデンへの輸出は順調に増加しており、 96年には約3万トンの豚肉が輸出された。
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