BSE発生により、 輸入牛の大量と畜処分を実施へ (ドイツ)




●国内産牛では初の発生例



  ドイツ政府は、 1月21日、 イギリス産の母牛からドイツ国内で生まれたとみら
れる牛に、 牛海綿状脳症 (BES) の発症が認められたと発表した。 これによると、 
今回BSEと診断されたのは、 北ラインウエストファリア州ヘクスターの農家で飼
育されていた92年7月生まれの牛で、 昨年12月27日に死亡しているが、 その後の
脳組織の検査によってBSEが確認されたとしている。 

 ただし、 この牛の母牛については、 固体識別上の技術的な問題から、 別な牛と
取り違えられている可能性もあるため、 一連の遺伝子関連情報の分析を通じて、 
さらに確認作業が進められている。 その一方で、 ドイツ政府は、 22日に、 緊急対
策会議を開き、 当面の措置として、 BSE発生件数の多いイギリスとスイスから輸
入された雌牛、 それぞれ約3千頭の処分を決定した。

●政府は飼料感染を否定



 92年当時は、 BSEの感染源として最も一般的とされる肉骨粉が、 まだ飼料に供
されていたが、 ドイツ政府の調査によって当該農家では肉骨粉飼料を使用してい
なかったことが判明しており、 今回のケースについては、 飼料を介した感染の可
能性は否定されている。 

 したがって、 政府のこの所見が正しく、 また、 当該BSE牛がイギリス産母牛の
産子であることが明確となった場合、 母子感染という感染経路も想定されること
になる。 なお、 母子感染については、 昨年イギリス政府が、 実験的飼育管理条件
下における感染の可能性を示唆したものの、 最終結論はまだ得られていない。

●過去の症例は輸入牛のみ



 ドイツ政府は、 これまで、 BSEの発生は輸入牛に限られていることから、 自ら
は清浄国であるとの立場を取っている。 同国でも、 92年に1頭、 94年に3頭、 合
計4頭の牛からBSEが確認されたが、 これらはいずれもイギリスからの輸入牛で
あった。 

 今回、 BSEが確認された牛の母牛とみなされているのは、 89年にイギリスのス
コットランドで生まれた後、 90年にドイツに輸入されたギャロウェー種である。 
なお、 この母牛は、 その後、 オランダに転売され、 既に昨年8月にと畜処分され
ているが、 BSEの兆候は示していなかったとされている。 

●牛肉消費、 再び減少へ



 ドイツでは、 イギリスのBSE問題が再燃した昨年3月以来、 国産牛肉について
の信頼性が高まったとされる。 昨年3月直後の牛肉消費量は、 前年比3〜4割程
度にまで減少したものの、 その後、 時間の経過とともに回復し、 96年通年では、 
1割程度の減少にとどまったとみられている。 しかしながら、 今回のBSEの発生
により、 ドイツ消費者の国産牛肉への信頼感は急速に薄ぎ、 既に同国の牛肉消費
は地域によっては大幅に減少していると伝えられている。 

 なお、 ドイツ国内には、 イギリス産輸入牛の産子が約1万2千頭、 スイス産輸
入牛の産子が約2千頭飼養されているが、 これらの処分は現在 (2月1日現在) 
のところ見送られている。 今後、 今回の発症の疫学情報の確認を待って、 措置が
決定されるものとみられる。 


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