羊のヨーネ病対策に着手 (豪州)




●最近になって急速に拡大



 豪州では、 以前から牛および羊に散発的にヨーネ病の発生がみられていたが、 
最近になって、 羊のヨーネ病が急速に拡大している。 ヨーネ病は、 疾病家畜自体
の損害に加え、 防疫上、 発生牧場には、 と畜用を除く家畜全体の販売・移動の禁
止措置が適用されるため、 大きな経済的損害が生じる。 

 発生状況を具体的に見ると、 ニューサウスウェールズ (NSW) 州では、 80年に
初めて発生がみられたが、 その後約10年間は、 発生地域が一部に限定され、 件数
もごく少なかった。 しかしながら、 この5年間で急激に拡大し、 現在は160牧場
で発生が確認され、 さらに未確認の発生件数を含めると、 数百件にのぼると考え
られている。 また、 ビクトリア州では、 比較的最近の95年11月に初めて発生し、 
現在は33牧場で発生が確認されている。 

●根絶の難しい疾病



 ヨーネ病は、 牛、 羊などの反すう家畜の細菌性伝染病で、 世界的に発生がみら
れる。 人体に伝染する危険性はないが、 家畜が発病すると、 慢性で頑固な下痢に
より栄養不良をおこして死亡するなどの被害が出る。 特に、 いったん発生すると、 
ふん便中の病原菌が牧場の土壌に拡散し、 かつ、 土壌中の病原菌は容易に死滅し
ないため、 当該家畜の処分だけでは根絶が難しいという問題を抱えている。 

 このため、 昨年、 連邦議会においても、 早急な羊ヨーネ病対策を求める声が高
まり、 現在、 連邦レベルでの防疫対策が検討されつつある。 こうした中で、 ビク
トリア州は、 他州に先駆けて大規模な羊ヨーネ病の撲滅対策に着手することとな
った。 

●ビクトリア州が対策を発表



 同州が発表した対策は、 発生が確認された牧場の羊群全頭のとう汰と、 汚染草
地の2年間 (2夏) の休牧による土壌中の病原菌の撲滅を柱としている。 対策の
発表当時は、 24牧場の6万2千頭をとう汰する予定であったが、 その後、 2月上
旬の時点で発生牧場数が33に拡大したため、 とう汰頭数も7万頭に増加する見込
みである。 

 羊のとう汰に際しては、 一定の補償金 (繁殖用雌1頭当り25ドル、 子羊は15ド
ルなど) が支払われ、 これらの対策にかかる費用の総額は、 100万豪ドル (約9,4
00万円) に上ると伝えられている。 また、 今後の発生に対処するための財源とし
て、 州内での羊の販売に際し、 1頭3〜5セントの課徴金を課す法案が州議会に
提出され、 早ければこの3月にも成立する見込みである。

●懸念される足並みの乱れ



 ヨーネ病対策に限らず、 伝染病疾患においては、 防疫上、 早期発見・とう汰が
最も望ましい。 ビクトリア州のマクナマラ州農業相は、 今回の羊ヨーネ病対策の
発表時に、 同じく発生のあるNSW州などでも同様の措置を講じるよう要請してい
る。 

 しかしながら、 発生状況がより深刻となっているNSW州では、 具体的な撲滅対
策がまだまとまっていない。 同州は、 独自に調査、 検討を継続し、 今後1年以内
に技術的、 経済的に妥当な撲滅対策を講ずる方針であるとしているが、 発生地域・
件数がかなり拡大しているだけに、 先行きは不透明である。


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