鶏卵輸出拡大の動き (タイ)



●採卵養鶏・取引業者の団体を設立


 昨年11月下旬、 バンコクに 「タイ採卵養鶏・取引・輸出業者協会 (TLPTEA)」が 設立された。 初代会長には、 豊富な資金力で矢継ぎ早に海外事業戦略を展開して いるタイ最大の複合企業、 CPグループの出身者が就任した。 同協会の目標は自国 産鶏卵の輸出拡大であり、 その主な活動は 「輸出可能な地域の市場調査」 と規定 されている。 また、 今回の協会設立は、 93年から94年にかけて鶏卵価格が低迷し た時期に、 生産者と輸出業者とが競合し、 香港への殻付き鶏卵輸出に影響が及ん だことが契機になったとされている。

●CPグループの鶏卵分野の拠点


 同協会の主要活動は 「輸出可能な地域の市場調査」 とされているが、 現実には、 タイ鶏卵にとっては、 香港がほとんど唯一の輸出市場である。 ちなみに、 92年以 降でみると、 年間700〜2,600トンの鶏卵を香港に輸出している。 しかし、 80万ト ンの生産量のうち15万トンを輸出している鶏肉に比べると、 鶏卵の輸出は、 50万 トンの生産量のわずかの部分にすぎない。 一方、 同協会の会員企業にはCPグルー プに所属するものが多く、 また、 同協会は、 昨年度、 政府の農業補助委員会から、 輸出に関連する奨励金の交付を受けた。 このため、 鶏卵業界では、 同協会が、 CP グループの鶏卵分野での海外展開拠点になると同時に、 政府に対する窓口になる ものではないかと言われている。

●採卵養鶏業界は今後の動向に注目


 一方、 香港への鶏卵輸出で同協会と競合する立場にある採卵養鶏農協の組合長 は、 「同協会とは輸出ルートが異なるので今のところ問題はない。 同協会が技術 面だけに限って活動するならばタイ採卵養鶏業界全体の利益に結びつくが、 輸出 市場をめぐって非協会メンバーと対立するようでは問題となる」 と述べ、 今後の 展開を見守る姿勢を示している。  タイでは、 企業グループごとに受け皿機関として協会を設立する例がブロイラ ー業界等にも見られ、 また、 採卵養鶏団体も農協を含めて既に複数存在している。 しかし、 大手企業が参画して協会を設立したのは初めてのケースである。 特に、 CPグループは積極的な海外事業展開を行っていることから、 鶏卵輸出にとどまら ず、 海外投資にまで発展する可能性もあり、 今後の動向が注目されている。
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