畜産団体が政府に意見書を提出 (マレーシア)



 マレーシアでは、 国家農業計画 (NAP) の見直しについての議論が進んでいる。 
一方、 畜産農家の全国団体であるマレーシア連邦家畜農家協会が、 政府に対して
NAPの見直しに関する意見書を提出し、 関係者に波紋を呼んでいる。 

●農業をめぐる環境変化に応じて見直しを開始


 NAPは、 1992年から2010年までの長期にわたるマレーシアの農業発展基本計画 として策定された。 しかし、 計画の開始から5年を経過して、 同国の農業を取り 巻く環境は大幅に変化した。 特に、 農産物の貿易については、 世界貿易機関 (WT O) の発足と共に自由化に向け大きく進んでおり、 NAPの策定時には想像もできな かった程のスピードで変化している。 こうした環境の変化に対応するべく、 昨年 8月、 同国のマハティール首相はNAPの見直しを指示し、 具体的な作業が開始さ れた。

●農業生産の拡大は民間主導が基本


 これに先立つ昨年5月、 同国の社会全般の発展に関する全体計画である第7次 マレーシアプラン (7MP) が発表された。 7MPでは、 電気、 機械などの製造業の 発展が国家の最重要課題として位置付けられているが、 農業部門については、 国 家の関与を最小限にとどめ、 民間主導により生産の拡大を進めるとされている。 今回のNAPに見直しは、 この7MPで示された方向に沿って行われており、 現在、 具体的内容について幅広く議論が行われている。

●畜産団体が支持・保護拡大を求める意見書


 このような中で、 年明け早々、 畜産団体の連合組織であるマレーシア連邦畜産 農家協会が、 政府に対し、 NAPの見直しに当たっての意見書を提出した。 この意 見書には、 マレーシア畜産が抱える問題点が明確に浮き彫りにされており、 非常 に興味深い内容となっている。 その要点は以下のとおりである。 1. 工場の進出や宅地化によって畜産農家が移転・廃業を余儀なくされること  から、 農業地域を明確化し、 同地域内の宅地化は最小限にとどめること。 2. 農業、 特に畜産の労働力不足が深刻化していることから、 外国人労働者の  雇用制度を簡素化し、 技能労働者の認定、 研修制度を整備すること。 3. 食品の安全性確保のため各種基準を設定し、 検査を通じて厳格に運用する  こと。 4. マレーシアの畜産は、 国から生産拡大や輸出振興に関する補助を受けてい  ないので、 畜産物の公正な貿易環境を確保するべく、 貿易相手国に一層の市場  開放を求めていくこと。 5. 畜産物の安定的な供給を図るべく、 政府と農業生産者が合同で、 市場動向  の予測等を行う委員会を設けること。 6. 畜産の近代化を押し進めるべく、 生産施設等への投資について税制上の優  遇措置を講じること。
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