豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○長期化する輸出低迷


1〜11月の累計で前年同期比7.6%の減少


 豪州食肉畜産公社 (AMLC) の発表によると、 96年11月の豪州の牛肉輸出量 は6万4千トンで、 前年同月比7.7%減となった。 1〜11月の累計でみても、 63万9千トンと前年同期比7.6%減となり、 長期にわたる輸出の低迷傾向を 示す形となっている。  最大の輸出市場である対日輸出についてみると、 1〜11月の累計は25万9 千トンで、 前年同期比では12%の減少となっており、 対日輸出の減少幅が大き かったことが、 全体としての減少の要因となっている。 なお、 同期間の総輸出量 に占める対日輸出の割合は41%となり、 昨年と比較すると2ポイント下げてい る。 対日輸出の不振の要因は、 日本市場において、 病原性大腸菌問題の発生によ り消費が停滞したことや、 96年8月からの冷凍牛肉に対する輸入緊急措置 (セ ーフガード) が発動されたこと、 また、 米国の供給増により同国産牛肉との競争 が激化したことに求めることができる。  また、 1〜11月の日本の累計輸入量が58万1千トンと、 前年同期を2%下 回る状況の中で、 豪州からの輸入は26万1千トンと、 前年同期比で9%減少し たのに対して、 同期間における米国からの輸入は28万6千トンと同6%増と逆 に増加しており、 明暗をはっきりと分ける結果となっている。 豪州の対日牛肉輸出状況 (96年1〜11月)     (単位:千トン、%) ───────────────────────────────────── グレインフェッド グラスフェッド 合  計 ─────────────────────────────────────  チルド  76.7 ( 79.3)  チルド  95.0 (85.4) チルド 171.7 (82.5) ───────────────────────────────────── フローズン 15.8 (105.6) フローズン 71.4 (98.5) フローズン 87.2 (99.7) ─────────────────────────────────────  合計 92.5 ( 82.8)  合計  166.4 (90.5)  合計  259.0 (87.6) ─────────────────────────────────────  注: ( ) 内は前年同期比

対米輸出も依然低迷


 さらに、 日本に次ぐ第2位の輸出市場である米国への輸出についてみても、 米 国内供給が過剰ぎみであることから、 1〜11月の累計は、 前年同期比で15% 減と大幅に減少し16万7千トンとなっている。 米国農務省 (USDA) は、 97年 には牛群サイクルが縮小期に入ると予想しており、 今後、 肉用経産牛のと畜が増 えると予想していることから、 対米輸出の主力である経産牛肉 (カウミート) の 輸出低迷が、 当面改善されることはなさそうだ。 米国への輸出は93年以降、 年 々減少の一途をたどっているが、 目下のところ、 対日輸出同様に対米輸出が好転 する材料は見あたらない。

東南アジア向け輸出へ活路を見いだす


 対日、 対米輸出の低迷が長期化の様相を示し始めた中で、 豪州は、 経済発展が 目覚ましい東南アジア地域への輸出を強化しつつある。 なかでも、 近年、 豪州か らの生体牛輸出の急拡大において注目されているフィリピン及びインドネシア向 けの牛肉輸出は、 1〜11月累計の前年同期比で、 それぞれ47%及び55%も の急増を示しており、 今後の豪州牛肉産業を支えるべき新しい有望輸出市場の出 現として、 その将来性が注目されている。
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