EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○子牛肉生産に対するBSEの影響


96年上半期の子牛肉生産、 5%減


 96年上半期のEU (旧12カ国) の子牛のと畜頭数は、 前年同期比5%減と、 比較的大きな減少を記録した。 1頭当たり枝肉重量の増加により、 重量ベースで の減少率は2%にとどまったものの、 下半期に入っても回復の兆しがみられない ことから、 96年通年での生産量は、 前年水準より大きく落ち込むことは確実と みられてる。  主要国別に96年上半期の子牛のと畜頭数をみると、 子牛肉の消費水準が高い イタリアでは、 前年同期比9%減と最も著しく減少した。 また、 他加盟国をはる かにしのぐEU最大の子牛肉生産国であるフランスでも、 前年同期比5%減となり、 ベルギーやオランダでも、 前年同期を下回る結果となった。

牛肉消費の1割を占める子牛肉


 EU全体では、 生産される子牛の約2割が子牛肉生産に仕向けられる。 このため、 牛肉消費全体に占める子牛肉の割合は、 1割前後に達しており、 わが国とは比較 にならないほどの消費規模と伝統を有している。  生産地域は、 一部の国に大きく偏っており、 フランス、 イタリア、 オランダ、 ドイツ、 ベルギーの主要5カ国で、 EU全体のほぼ9割以上の子牛肉を生産してい る。 また、 1人当たりの年間消費量も、 オランダの1.1kgから、 フランスの4. 9kg、 ベルギーの5.5kgまで、 大きな格差がみられる (オランダは、 輸出が多 い) 。

BSE対策で大きく減少


 近年は、 雄牛特別奨励金をはじめとする各種の生産者補助制度が、 牛を長期に 保有する方に有利に作用したことから、 子牛肉の生産は減少傾向にあった。 この 結果、 92年から95年までの3年間に、 子牛肉生産量 (重量ベース) は7%減 少した。  しかし、 96年の減少は、 従来とは異なり、 牛海面状脳症 (BSE) 問題による ところが大きい。 BSE問題発生後、 各国でイギリス産からの輸入牛のと畜処分(廃 棄) が実施されており、 このうちフランスでは7万頭、 オランダでは6万4千頭 のイギリス産子牛がと畜処分され、 大幅な子牛肉生産の減少をもたらした。 イギ リスは、 域内の主要な子牛の供給国であり、 年間30万頭から40万頭の子牛が、 オランダやフランスなどに輸出され、 これらの国で子牛肉向けの肥育が行われて いる。

今後、 さらに減少の可能性も


 この他に、 昨年10月より導入された、 平均子牛枝肉重量 (加盟国別) を15 %下回って出荷した場合に奨励金を支給する早期販売奨励金制度や、 生後20日 以内でのと畜に対して奨励金を支給する子牛処分奨励金制度が、 今後の生産減の 要因として挙げられる。 通常、 子牛肉向けの枝肉重量は、 120kgから160kg 程度であるが、 これらの措置により、 今後、 さらに子牛肉生産量の減少ペースは 加速される可能性が高い。 EUの子牛肉生産 ──────────────────────────────────── 1992年 93年 94年 95年 96年上半期 前年同期増減率(%) ────────────────────────────────────  (千頭) フランス 2,376 2,206 2,116 2,042 981 -5.2 イタリア 1,515 1,419 1,384 1,321 628 -9.1 オランダ 1,187 1,174 1,198 1,198 560 -2.3 ドイツ 556 528 514 501 257 +4.9 ベルギー 376 379 380 336 143 -15.9 ──────────────────────────────────── 旧12カ国合計   (千頭) 6,315 5,981 5,935 5,658 2,678 -5.4  (千トン) 840 811 812 780 379 -2.1 ──────────────────────────────────── 資料:ZMP
元のページに戻る