タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○鶏肉及びヒナの生産・価格動向


鶏肉の生産・価格動向


 タイ農業協同組合省によると、 9月の鶏肉生産量は、 8月までの国内鶏肉価格 の高騰に刺激されて大幅に増加し、 対前年同月比19. 8%増の63. 6百万 羽となった。 これで、 鶏肉生産量は、 5ヶ月連続して増加したこととなる。 また、 単月の生産量が60百万羽以上を記録したのは、 94年3月以来18ヶ月ぶりで ある。  しかし、 輸出が依然として不調な中で国内市場への供給が増加したため、 国内 卸売価格が8月をピークに急落し、 大手養鶏業者は、 10月後半、 ヒナ餌付け羽 数の20%削減という生産調整を実施した。 この結果、 鶏肉卸売価格は、 生産調 整の開始から約1ヶ月で持ち直し、 その後は安定的に推移しており、 12月のバ ンコク市場のブロイラー卸売価格は、 前月と同水準のキロ当たり27バーツ (1 バーツ=約3. 5円) となっている。 また、 鶏肉生産量は、 生産調整の実施に 伴い、 その後は横ばい若しくは減少に向かっているものと推定されている。

問題をはらむヒナ価格


 一方、 ヒナ価格の動向をみると、 鶏肉生産が停滞傾向にあった96年1月まで は、 1羽当たり10バーツ前後で安定的に推移し、 鶏肉の卸売価格 (需給) の影 響を余り受けていない (グラフ参照) 。 ヒナの供給がインテグレーションを形成 する大手企業によって大部分を占められている (上位10社で約8割) ことから、 このことは、 これらの大手企業が生産調整の下で、 有利なヒナ価格を誘導できる 状況にあったことを示唆している。  ちなみに、 この時期のヒナの生産費はおよそ6.5バーツと言われており、 上 記ヒナ価格の高値安定は、 インテグレーションに組み込まれていない中小のブロ イラー生産者の経営を圧迫した。 このため、 政府は、 低価格のヒナ供給のための 生産資金の低利貸付けなどを計画したが、 一部業界の反対により実現には至らな かった。  なお、 タイには、 大手インテグレーションによる生産の系列外に、 ブローカー によって運営される生鳥市場があり、 インテグレーションに組み込まれていない ヒナ生産者は、 主にこの市場を経由して大手インテグレーションの処理場に出荷 している。 これらの市場では、 確実な利益は見込めない反面、 価格動向によって は、 逆に大きな利益を期待できることもある。

生産調整の緩和でヒナ価格が急落


 ところが、 96年1月以降、 鶏肉の生産調整が緩和され、 生産増加の局面を迎 えると、 状況は一変した。 ヒナ生産・出荷羽数が急増するとともにヒナ価格は大 きな変動を示すようになり、 10月には1羽3バーツという低価格も出現した。 ただし、 この状況は一時的なものにとどまり、 先に述べたように、 10月後半に 生産調整を再開してからはヒナ価格が回復し、 鶏肉価格も安定した動きを示して いる。  以上のように、 ヒナの生産・出荷羽数の調整は、 ブロイラー生産量の調整、 価 格支持に効果を有する反面、 ヒナ価格の高値安定をもたらすことにもなる。 タイ の中小ブロイラー生産者は、 今後とも、 大手インテグレーターとの厳しい生存競 争の下に置かれることに変わりはない。
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