世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○世界の飼料穀物需給は緩和傾向に


96/97年度の飼料穀物生産は対前年度比11. 3%の増加


 米農務省が12月に公表した穀物需給予測によると、 96/97年度 (96年 9月〜97年8月) の世界の飼料穀物生産量は、 対前年度比11.3%増の88 5.4百万トンに達するとされた。 この増産の背景としては、 世界の飼料穀物生 産量の約3割、 同トウモロコシ生産量の約4割を占める米国が、 昨年度の不作か ら一転して大豊作となったことが大きく影響している。  しかし、 米国以外にも、 EU、 カナダ、 中国等の北半球の主要国が、 軒並み予想 を上回る増産となったことも見逃せない。 EUは、 域内穀物需給の緩和と価格低下 に伴って、 域外への輸出が急激に増加し、 一時は輸出に課徴金を課する措置を取 った。 また、 中国も2年連続の大豊作で、 穀物輸入を停止するなど、 国際穀物需 給に多大な影響を及ぼした。

消費量は同2. 6%の増加


 一方、 世界の飼料穀物消費量は、 対前年度比2.6%増の860百万トンにと どまると予測されている。 その内訳を見ると、 高水準の経済成長を持続する中国 の需要拡大が目立つ一方で、 輸入に大きく依存する東南アジア諸国は、 国際穀物 価格の急激な高騰に伴って需要が減退し、 消費の伸び悩みが見られた。 また、 伝 統的に大量の穀物を輸入するロシアは、 今なお、 経済システムの再構築が不充分 で、 投下資金や投入資材の不足、 また、 エネルギーの不足によって農畜産業は依 然として不振な状態が続いており、 飼料穀物の需要も低下を続けている。  ちなみに、 ロシアや東南アジア諸国の飼料穀物需要の減少は、 国際貿易にも大 きな影響を及ぼしており、 96/97年度の世界の貿易量は、 前年度比8%減の 96. 5百万トンになると予測されている。

期末在庫率は13. 4%に回復


 このような需要を上回る生産の増加により、 96/97年度末の世界の飼料穀 物在庫量は、 史上最低水準となった前年度末を27%も上回る115百万トンに 達すると予測されている。 これに伴い、 在庫率 (総在庫量/総需要量) も、 昨年 度末の10. 8%から、 今年度末には13. 4%に回復するとされているが、 飼料穀物在庫率の一般的な目標水準とされている17〜18%には到達しない。 つまり、 飼料穀物の国際需給は、 全体的には緩和する傾向にあるとは言え、 単年 度のみで十分な緩衝在庫を貯えるのは難しい状況にある。 従って、 今春の米国の 飼料穀物の作付動向いかんによっては、 再び国際需給が不安定化することも否定 はできないと言えよう。

飼料穀物価格は沈静化の見通し


 需給緩和に伴い、 飼料穀物の取引価格も低水準で推移すると見込まれている。 USDAは、 12月、 96/97年度の米国のトウモロコシ生産者受取価格は2.5 0〜2.80ドル/ブッシェルの範囲で推移するとの予測を公表した。 これは、 昨年7月に記録した史上最高値の5.48ドル/ブッシェルと比べると、 ほぼ半 値の水準である。 USDAの予測では、 南アメリカ、 オセアニア等の南半球の穀物生 産も、 全般に前年を上回るとされており、 少なくとも今年前半は、 北半球の主要 国で重大な天候異変等がない限り、 飼料穀物価格は比較的落ち着いた動きを示す と見込まれている。
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