EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○乳用経産牛の飼養頭数、 引き続き減少


6月センサス、 前年同期比0.8%減


 欧州統計局発表の96年6月期の乳用経産牛センサスによると、 EU15カ国の 乳用経産牛の飼養頭数は、 全体で対前年同期比0.8%減の約2千209万頭 (暫定値) となった。  ただし、 国別にみると増加した国と減少した国があり、 最も増加したのは、 近 年、 牛乳・乳製品の消費が着実に伸びているとされるスペインであり、 3.1% 増の約129万頭となった。 また、 イタリアやアイルランドなどでも増加した。 逆に、 最も減少したのはベルギーであり、 5.3%減の約64万頭となった。 ま た、 オランダ、 フランスなどでも減少した。 なお、 ここでは95年にEUに新規加 盟したオーストリア、 スウェーデン、 フィンランドの飼養頭数が押し並べて減少 していることが特徴として挙げられる。 表 96年6月期のEUの乳用経産牛センサス 資料:欧州統計局  注:暫定値

生乳生産量、 前年同期比0.6%増


 しかしながら、 乳用経産牛の飼養頭数が減少したにもかかわらず、 96年1月 から11月のEUの生乳生産量 (乳業メーカー向けの出荷ベース) は、 全体で対前 年同期比0.6%増の約1億470万トン (暫定値) となった。  1月から10月までの国別の統計では、 スペインが国内の飼養頭数の増加を反 映して、 5.9%増の約454万トンとなったのをはじめ、 イタリアやアイルラ ンドでも着実に増加している。 また、 飼養頭数が減少したベルギーやオーストリ アでも増加している。  このように生乳生産量が増加した原因としては、 一部地域を除き、 全般的に粗 飼料供給が順調に行われたことなどにより、 一頭当たりの泌乳量が前年に引き続 き増加傾向にあることが考えられる。 なお、 域内のチーズや飲用乳などの消費が 前年に比べ増加しているため、 酪農家の生産意欲を刺激していることもその一因 であるとみられる。

イギリスのBSE対策、 今後の飼養および生産動向に影響か


 今後、 EUの乳用経産牛の飼養動向については、 従来よりも減少幅が大きくなる ことが予想される。 それは、 ドイツ、 フランスに次ぐ頭数の乳用経産牛を飼養す るイギリスで、 牛海綿状脳症 (BSE) 対策の一環として、 国内の30カ月齢以上 の牛のと畜処分が行われているためである。 同国では、 と畜処分の対象となって いる牛の約6割が乳用経産牛とみられている。  また、 イギリスは、 EUの生乳生産の1割以上を占めていることから、 そのと畜 処分計画の進行がEUの生乳生産全体に及ぼす影響が少なくない。 現に、 11月の 同国の生乳生産量は、 対前年同月比8.7%減の約105万9千トンとなり、 同 月のEU全体の生産量の減少の一因になった。  イギリスでは11月までに100万頭以上の牛が処分されたとされている。 こ のまま、 同国のと畜計画が進行し、 乳用経産牛の飼養頭数が減少していけば、 そ れが同国の生乳需給のみならず、 EUの生乳需給全体にも影響を及ぼす可能性があ る。
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