EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○豚肉価格、 大幅に低下


ピーク時より、 19. 2%の低下


 牛海面状脳症 (BSE) 問題の影響による、 牛肉から豚肉への消費シフトに伴う 需要の急増から、 96年夏場にかけて高騰したEUの豚肉価格は、 秋以降は一転し て、 大幅な低下傾向を示している。  EU平均の豚枝肉卸売価格 (市場参考価格、 以下同じ) は、 7月に184ECU(約 2万7千円) /100kgとピークに達し9月まで堅調に推移した後、 10月、 1 1月と連続して下落した。 12月はクリスマス前の季節的な需要の増加により、 148.6ECU(約2万2千円) /100kgとやや持ち直した (前月より0.6% の値上がり) ものの、 これは夏のピーク時に比べると19.2%の低下となって いる。 なお、 この価格は、 ほぼ前年同月並みの水準である。

ドイツ、 最大の下げ幅


 主要国別に、 ピーク時と12月の価格を比較すると、 最大の豚肉生産国である ドイツでは、 ピーク時に比べ22.5%の値下がりと主要国の中で最大の下げ幅 となった。 次いで、 オランダの22.0%、 イギリスの21.4%、 デンマーク の14. 0%と続いている。  このように、 秋以降、 価格が大幅に低下した理由としては、 1) 域内の牛肉消 費が徐々に回復傾向にあり、 豚肉の高価格を支えた 「特需」 が解消しつつあるこ と、 2) 豚肉の域外向け輸出が日本向けの急減などにより、 引き続き減少傾向に あること、 などが挙げられる。

価格低下を受け、 輸出補助金を再開


 この価格の大幅な低下に対する措置として、 オランダやデンマークなどの業界 関係者の間からは、 EU委員会に豚肉の民間在庫補助 (APS制度:企業が一定期間、 豚肉を在庫保管する場合に、 補助金を交付する制度) の実施を求める声が出てい た。  しかしながら、 同委員会は、 今回はAPSの実施を見送ることとし、 12月9日 付けで当面の対策として、 凍結されていた豚肉(冷凍、 冷蔵)の輸出補助金 (”ゼ ロ”レートの補助金) の一部の品目に対する交付再開を決定した。 これは、 EU委 員会が、 輸出補助金の交付を再開した方が、 APSの実施よりも少ない財政負担で、 域内の豚肉市況のテコ入れを図ることができると判断し、 取った措置であるとみ られる。  だが、 先ごろ発表された96年8月期の豚センサスによれば、 EU全体の肉豚生 産量は、 今後やや増加傾向になることが予想され、 豚肉市況はさらに悪化するこ とが懸念されている。 また、 今回、 EU委員会の決定した措置 (APSに代えて補助 金を交付) について、 一部の業界関係者の間には、 依然として根強い不満が残っ ている。 今後、 豚肉市況がさらに悪化した場合に、 EU委員会が再びAPSの実施に ついて検討を迫られるかどうか否かに、 注目が集まっている。
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