牛製品の禁輸解除に向けて、 一歩前進 (イギリス)ス))



選択的と畜処分の実施を発表


 イギリス政府は、 去る12月16日、 牛海綿状脳症 (BSE) 対策の一環である、 選択的と畜処分に着手する旨を発表した。 このと畜処分は、 BSE患畜が存在した 同一時期に、 その農場で生まれた牛を (BSE感染の可能性が高いとの認識により) と畜処分するというものである。  これで、 96年3月27日に実施されたイギリス産牛製品禁輸措置の解除への 前提条件として、 同年6月のEU首脳会議で合意された条件のすべてに着手したこ とになる。 その結果、 禁輸解除に向けた検討を開始するための筋道が整ったこと となり、 フィシュラー農業委員や他加盟国からも歓迎の意が表明されている。

EU首脳会議合意の五つの条件


 昨年6月の首脳会議では、 イギリスのBSE対策の遂行を前提条件として、 禁輸 措置の段階的な解除を検討することが合意された。 その前提条件は、 1) BSE伝播 の可能性のある牛の選択的と畜処分、 2) 公的機関の管理下での牛個体登録と移 動記録の制度化、 3) 飼料工場および農家からの肉骨粉の撤去、 ならびに関連施 設や器具等の洗浄に関する規則の制定、 4) 30カ月齢以上の牛のと畜処分計画 の効率的な実施、 5) 牛と体からの特定内臓の除去方法の改善、 の五つである。  禁輸解除に当たっては、 イギリスがこれらの対策を実施し、 EU常設獣医委員会 などの専門委員会にその遂行状況等に関する説明ペーパーを提出して検討を行い、 さらにEUの意志決定機関の審議を受けてその可否が決定されることとなる。

10万頭に上る選択的と畜処分対策


 今回の選択的と畜処分の実施が、 他の四つの措置より遅れた理由は、 30カ月 齢以上の牛のと畜処分が優先されていたことによる。 30カ月齢以上の牛のと畜 処分は、 処理能力等の問題から、 一時は計画の大幅な遅延が伝えられていたが、 その後は処分が軌道に乗り、 今回の発表までにすでに百万頭以上を処分したとさ れている。  したがって、 選択的と畜処分の開始は、 30カ月齢以上の牛のと畜処分に一応 のめどが立ち、 と畜処分能力に余裕が出てきたことによる。 同日のホッグ農相に よれば、 選択的と畜の対象は10万頭を超えるとみられるが、 今後6カ月間で処 分を完了できるとしている。

個体管理制度の充実がカギ


 イギリス政府は、 選択的と畜処分に着手したことにより、 1月中にもEU委員会 に対し五つの条件の遂行状況等に関する説明ペーパーを提出し、 BSE清浄牛群等 を対象に、 早期に段階的な禁輸解除の検討開始を迫るものとみられる。  しかしながら、 (五つの条件に含まれている) 公的機関による牛個体登録と移 動記録の管理制度の充実には、 年間約2千5百万ポンド (約50億円) の経費が 必要とされ、 その財源負担を業界にも求める政府と、 業界との間で激しい攻防が 予想される。 このため、 個体管理制度の完全実施までには、 まだかなりの時間を 要するとみられており、 イギリス産牛製品の禁輸の段階的な解除は、 早くとも今 年中盤以降との見方が強くなっている。
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