牛肉の食味保証システムがスタートへ (豪州)州)



肉質の斉一性が大きな課題


 豪州の牛肉業界が、 国内外のユーザー、 消費者に対して 「おいしさ」 を客観的 に保証する、 食味保証制度 (EQA;Eating Quality Assurance)を開始することと なった。  同国では、 食肉の品質保証 (QA) を強化する動きが活発化しているが、 中でも、 牛肉に関するQAは最も進展しているものの一つとされている。 しかしながら、 こ のQAは、 食肉としての安全性に重点を置いたもので、 食味に深く関連する肉質の 斉一性について対応できるシステムとはなっておらず、 この点で、 ユーザーの確 固たる信頼を得られないという問題を抱えている。

従来の肉質評価では不十分


 豪州産牛肉は、 放牧を主体に生産されるため、 その品質は、 と畜の季節、 生産 地域、 仕上げ時期の気候条件などに大きく左右されるという特徴がある。 また、 近年は、 フィードロット産業の発達によって、 グレインフェッド牛肉も市場で一 定のシェアを占めるようになっているが、 このことも、 牛肉の品質格差をますま す拡大する一つの要因となっている。  しかしながら、 豪州における肉質の評価手段であるチラー・アセスメントは、 「おいしさ」 を保証する具体的な格付け制度となっていないばかりか、 食肉関係 者からは、 複雑でわかりにくいとの声が多く挙がっている。

食味の指標を求める声


 このため、 牛肉業界では、 ユーザーの信頼を勝ち得るために、 わかりやすく、 かつ、 「おいしさ」 の指標ともなるような格付け制度の確立を求める声が挙がっ ていた。 こうした要望は、 特に、 最大の輸出市場である日本における、 近年の米 国産牛肉との競争激化の中で、 ますます強まりつつあった。  こうした要求を満たす格付け制度の確立は、 豪州食肉産業のかじ取り役である 食肉産業評議会 (MIC) が、 昨年12月に公表した将来戦略の中でも、 課題の一 つとして取り上げられた。 EQAプログラムは、 こうしたことを背景に開始される こととなったものである。

信頼獲得と輸出拡大を目標


 同プログラムの下では、 食肉研究公社 (MRC) の研究成果を基に、 ユーザー向 けを主眼とした新しい格付け制度が制定される予定である。  また生産、 加工、 調理という 「農場から食卓まで」 の各段階で、 牛肉の食味を 決定する要素を抽出し、 適切な管理方法を確立することも盛り込まれている。 こ うした過程を表現する用語として、 安全性対策としてのHACCP (危害分析重要管 理点監視方式) にならって 「PACCP」 (食味分析重要管理点監視方式:Pはpalata bility (味の良さ) の頭文字) という新造語も出現している。  EQAプログラムには、 MRC、 食肉業界、 大手スーパーのほか、 昨年、 独自にグレ インフェッド牛肉に関する格付け制度の開発に着手した、 豪州フィードロット協 会からも代表が加わり、 豪州内の関係業界をまとめた形で推進される予定である。  牛肉業界は、 今後、 1年半以内に、 消費者に牛肉の 「おいしさ」 を保証するシ ステムを確立することを目指しているが、 同プログラムが、 国内外のユーザー、 消費者の食肉への信頼感を高め、 ひいては消費回復、 輸出拡大につながるものと なるかどうか注目される。
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