農畜産物の加工産業の発展に期待 (マレーシア)ア) )


 マレーシアは、 昨年11月下旬、 第2次工業化10ヶ年計画 (IMP2)を発表し、 
2020年に先進工業国入りすることを目標に2005年までの主要産業の開発
計画を明らかにした。 このうち、 畜産関係で注目されるのは、 生活スタイルの変
化に対応した加工畜産物や、 イスラム教徒向けの 「ハラル (神聖な) 」 畜産物の
成長が期待されるとして、 業界に対してそれへの対応を促している点である。

工業分野を中心に8%の経済成長を目途


 IMP2は、 各種の中長期計画の中でも特に工業分野に焦点を当てたものであり、 これを包括する全体計画としては、96年5月に発表された第7次マレーシア(開 発) 計画 (7MP) がある。 この全体計画の農業分野では、 パーム油、 ココア、 ゴ ムなど工業原料の他、 畜産物や野菜などもカバーしており、 川上産業としての農 業を工業との関わりの中で位置付けている。  IMP2の全体計画では、 21世紀に向けたマレーシアの工業開発のため、 10 年間で2千5百億リンギット (約1千億USドル) の民間投資を予想し、 このうち 4割を外国投資に期待してる。 この間、 計画推進のための政策や人的資源の確保、 技術の開発、 インフラ整備などを実施するのが政府自身の役割である。 この結果、 GDPに占める工業生産高の割合は、 95年の33%から2005年には38%に 上昇するとしている。 また、 計画期間内の経済成長率は、 平均8% (実質ベース) が見込まれている。

農畜産物の加工産業の発展に期待


 注目すべきものは、 農産物の取扱いである。 マレーシアは、 もともとパーム油 やゴムなど、 工業原料となる農産物の生産量が多いため、 畜産物や水産物の加工 原料需要の拡大と農産物加工業の発展に期待が寄せられている。 計画では、 「こ れらの農産物を原料として使う川下産業が、 付加価値を高めた製品を生産するこ とが重要」 であるとし、 水産、 畜産、 果樹、 野菜および花卉生産に今後の拡大を 期待している。  しかしながら、 畜産部門の発展計画の進行は、 現実的にはかなり厳しいものと なっている。 農業省によれば、 マレーシアの畜産物自給率は、 豚肉および鶏肉、 鶏卵は100%を超えているものの、 牛肉は20%、 羊肉は5%、 牛乳に至って は4%にしか達しておらず、 その向上は容易なことではない。 さらに、 割高な輸 入飼料への依存率が高いことも問題となっている。

ハラル畜産物の生産拠点をめざす


 ただし、 IMP2では、 マレーシアの畜産業発展の強みは別のところにあると指 摘している。 それは、 自らがイスラム教国であることから、 ハラル畜産物 (およ び加工品) の国際的な生産拠点になれる可能性があることである。 ちなみに、 世 界のハラル食品の市場規模は、 年間約800億ドルといわれる。  このため、 IMP2では、 ハラル畜産物の国際的な認証制度の確立のほか、 品質 や衛生面での国際基準を満たすよう様々な対応を提起している。 イスラム法に準 拠し、 同時に品質面でも国際基準に適合した畜産物を製造することによって、 こ の分野の産業振興を図ろうというのである。 これが成功すれば、 マレーシアは、 ハラル食品の国際市場において、 優位な立場に立つことができる可能性があると いえよう。
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