農業労働者数が引き続き減少 (EU)



● 前年より3.2%の減少


 欧州統計局は、 このほど、 EU15カ国の農業労働者数に関する調査結果を発表し た。 これによると、 96年の農業労働者数は700万5千AWU (年間労働単位で計測: 1AWUは、 1人の労働者が1年間フルタイムで農業に従事したことを表す)で、 前 年より3.2%減少した。 農業労働者数の減少傾向は、80年代後半から続いていたが、 96年の減少率は、 過去に比較して最も低い減少率となった。  国別にみると、 農業労働者数は、 EU15カ国すべてで前年より減少し、 スペイン (前年より5.9%の減少)、 オーストリア (同4.8%の減少)、 フィンランド (同4.4 %の減少) など6カ国がEU全体の減少率を上回ったものとなった。 なお、 EUの農 業労働者数は、 イタリア (170万AWU)、 フランス (103万AWU)、 スペイン (96万AW U) の3カ国で全体の過半数を超えるものとなっている。

● 家族労働者数は、 3.7%の減少


 このうち家族労働者数は、 533万AWUと、 全農業労働者数と同様に、 前年より3. 7%減少した。 同労働者数もまた、 EU15カ国すべてで前年より減少し、特にオース トリア(前年より5.6%の減少)、 スペイン(同5.4%の減少)、 ルクセンブルク(同4. 7%の減少) の減少率が大きい。  また、 非家族労働者数は、 EU全体では1.7%の減少となっている。 なお、 同労 働者数は、 各国によりばらつきがあり、 スペイン (前年より7.2%の減少) やデ ンマーク (同3.6%の減少) などでは、 前年より減少したのに対して、 ギリシャ (同5.9%の増加) やオランダ (同5.2%の増加) など5カ国では前年より増加し ている。  なお、 家族労働者の割合が高かった国は、 フィンランド (97%)、 アイルラン ド (91%)、 オーストリア (88%) であったが、 反対に低かった国はイギリス(65 %)、 イタリア (68%)、 オランダ (70%) であった。 なお、 EU全体では76%であ った。

● 経営弾力化や作業の専門化が雇用労働力増加の背景


 こうした調査結果について、 欧州統計局は、 果物や野菜生産農家のように、 労 働需要がその年の生産量や季節によって変化する場合には、 非家族労働者の雇用 により弾力的な経営が行われていることのほか、 高齢者の農業経営から引退が進 んでいることや、 女性の他の産業部門への進出などにより家族労働者が減少して いることから、 非家族労働者の雇用が徐々に増加しているといった構造的な変化 がみられていると指摘している。  また、 多くの農家、 特に小規模な農家では、 新技術の導入や農業機械の更新の ための投資を行うよりも、 むしろ、 特定の専門的な作業を担わせる目的で、 契約 に基づき農業労働者を雇用する形態が増えてきていると分析している。
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