◇絵でみる需給動向◇
96年秋口以降、 上昇傾向を示していた域内の脱脂粉乳の価格は、 97年に入って も依然として上昇が続いている。 指標価格の一つであるドイツの工場渡し価格は、 96年8月に363マルク (約2万6千円)/100kgで底を打った後、 9月以降は上昇 に転じ、 97年2月には、 418マルク (約3万円) となった。 なお、 2月は前年同 月を6.1%上回り、 96年8月の低価格時に比べると、 半年間で15.2%の値上がり となった。 また、 輸出依存度が高いオランダの工場渡し価格も、 9月以降は上昇に転じて いる。 97年2月には476ギルダー (約3万6千円) で、 対前年同月比では1.1%上 回るとともに、 96年8月に比べると、 10.0%の値上がりとなっている。
この価格上昇の原因は、 昨秋以降の生乳生産量の減少により、 脱脂粉乳の生産 量が減少 (96年12月の生産量は、 対前年同月比7.8%減) している中で、 EUの主 要輸出先であるメキシコやアルジェリアなど主要国向けの輸出が回復したことに ある。 特に、 かつて最大の輸出先であったメキシコは、 94年末の通貨危機に伴う 国内経済の混乱により、 輸入が減少していたが、 96年に入ってからは経済状況が 回復傾向にあり、 それに伴い外貨事情も改善しつつあることから、 輸入需要が増 加している。 なお、 主要相手先への輸出が回復したことにより、 域外向け輸出価格も回復傾 向を強めている。 ドイツ市場価格情報センター (ZMP) によると、 97年2月の輸 出価格 (西欧主要積み出し港の本船渡し価格) は、 1,840米ドル (約22万3千円) /トンとなり、 ここ1年で価格が最も低下した96年8月の1,650米ドル (約20万 円) に比べると、 11.5%の上昇となった。 さらに、 域内需要動向では、 かつては全需要量の6割近くを占めた子牛飼料向 けの需要が回復している。 これは、 96年3月の牛海綿状脳症 (BSE) 問題の発生 により低迷していた牛肉消費に、 徐々に回復の傾向がみられることなどから、 肉 牛生産者の増頭意欲が高まりつつあることによるものである。
EU委員会は、 96年前半の脱脂粉乳の価格低迷を受けて、 介入買入れ (3月から 8月までの6カ月間の季節介入) を実施したため、 介入在庫量は、 10月末には約 12万7千トンにまで増加した。 しかしながら、 97年2月半ばの在庫量は、 脱脂粉 乳市況が好転しているにもかかわらず、 約12万トンとあまり減少していない。 だが、 このままメキシコなどの主要相手先への輸出が好調に推移し、 かつ、 域 内需要も堅調に推移すれば、 現在のところ、 域内の脱脂粉乳の生産が急増する要 素は見当たらないだけに、 介入在庫量は減少に向かい、 それに伴って、 97年の価 格動向は、 価格が全般的に好調であった95年並みの水準で推移するものとみられ ている。
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