BSE問題で公衆衛生部門を組織改革へ (EU)



● 審査委員会、 BSE対策に関する報告書を発表


 牛海綿状脳症 (BSE) 臨時審査委員会は、 この程、 EUのBSE対策に関する報告書 を発表した。 当該審査委員会は、 96年9月に欧州議会内に設置され、 歴代のEU農 業委員など、 農業分野の要人を喚問するとともに、 過去のEUのBSE対策に問題が なかったかどうかを審査していた。  同報告書は、 まずイギリスのBSE対策について、 「BSE対策に係る多くの関連法 規を整備したが、 適切な運用が行われなかった」 と報告している。 具体的には、 (1)肉骨粉の飼料への使用禁止措置が十分に機能しなかったこと、 (2)牛肉等の輸 出禁止を監視する検査官が港湾地区に配置されていなかったこと、 (3)生体牛の 移動記録やBSE発生牛群の追跡調査に不十分な面があったことなどを指摘してい る。  また、 EU委員会へ影響力を持つ科学獣医委員会 (ScVC) でイギリス出身の委員 が多数を占めていることもあって、 BSE問題を同国の国内問題にとどめ、 同国か らの輸出への影響を回避するべく関係者に働きかけたとも指摘した。 さらに、 同 報告書は、 96年にイギリスがEU政府に非協力な対応を取ったこと、 また、 同国の ホッグ農相が審査委員会への出席を拒否したことなどについても、 非難している。

● EU委員会には、 責任と過失を指摘


 さらに、 同報告書は、 EU委員会の対策についても、 組織上の問題、 情報隠ぺい など16項目にわたってその責任と過失を指摘している。 組織上の問題については、 (1)公衆衛生面での農業総局、 産業総局など関連総局の横のつながりが欠如して いたこと、 (2)事実上、 ScVCの意見にもEU委員会が、 拘束されすぎているという 事情にあったこと、 (3)ScVCの決定は全会一致が原則のため、 少数意見がEU委員 会の上部機関に伝わらなかったことなどを指摘している。  また、 情報隠ぺいについては、 公衆衛生よりも市場の安定を優先した結果であ ると指摘している。 イギリス産牛肉等の輸出禁止措置は、 90年に既にEU委員会内 で検討されたが、 制定根拠の欠如を理由に却下されており、 同報告書は、 これに ついて、 業務遂行上の意識欠如であると適している。 ちなみに、 輸出禁止措置は、 96年に世論に押されて制定に至っている。  同報告書は、 最後に、 情報公開を通じたBSE対策の透明性、 輸出禁止措置の監 視、 公衆衛生対策の徹底、 および円滑な市場取引の回復を勧告している。 特に、 公衆衛生対策の徹底については、 現在、 農業総局、 産業総局など4総局に分散し ている公衆衛生に関する権限を一括して扱える部署を設置して、 移し替えること を訴えている。 なお、 同報告書は、 今後欧州議会に諮られる予定である。 また、 これに関連して審査委員会では、 EU委員会に対する不信任決議案も浮上したが、 採択には至らなかった。 しかしながら、 議会内では、 依然として一部で不信任決 議案の提出が検討されている模様である。

● EU委員会、 自らの公衆衛生部門の組織改革案を発表


 このような状況下で、 EU委員会は、 2月12日、 組織変更などを含む公衆衛生部 門における自らの改革案を以下の通り発表した。 1 公衆衛生に関係する委員会 (ScVC、 科学食品委員会、 科学農薬委員会) の所 管を従来の農業総局から消費者保護総局に移管する。 2 アイルランドに設置する予定である動植物検査センターの規模を拡大すると ともに、 その所管を農業総局だけでなく、 消費者保護総局とする。 3 これら科学的問題を扱う委員会での議論を公表する。  今後、 この改革案は、 サンテールEU委員長、 フィシュラー農業委員など5名の EU委員で組織された食品安全グループの主導の下で進められることとなる。
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