イギリスの生乳集荷販売組織であるミルクマーク (MM) は、 97年4月以降の生 乳販売契約を取り決める入札を実施した。 MMは、 公正取引委員会から販売価格設 定の不透明性に対する指摘を受け、 今回から、 入札方法を、 (1)申込数量が供給 予定数量の9割未満の場合、 販売価格を引き下げて再度入札を行う、 (2)販売価 格を、 域内の乳製品介入価格の生乳相当価格 (IMPE:バター、 脱脂粉乳の介入価 格から帰納的に算出した生乳の価格) にまで引き下げた場合は申込数量にかかわ らず、 入札を終了できると改訂した。 第1回目の入札は、 前年7月に比べ、 販売価格を4〜8%引き下げて行われた。 MMは、 販売価格を引き下げた理由について、 主としてポンド高による、 グリーン レート (制度価格に適用される為替レート:ECUから各国通貨レートへの交換レ ート) の切り上げのためであると発表している。 ポンドのグリーンレートの切り 上げは、 ポンド表示の乳製品の介入価格や生乳指標価格の低下を意味するからで ある。 しかしながら、 MMがこのように販売価格を引き下げたにもかかわらず、 申 込数量が供給予定数量の75%にしか達しなかったため、 新規定に従い、 さらに価 格を引き下げて再度入札が行われた。
再入札では、 MMが販売価格をIMPEに設定したため、 新規規定より、 これが最終 入札となった。 しかし、 販売価格を下げたにもかかわらず、 1回目と同様26%の 不落が生じる結果となった。 さらに、 申込数量が安価な契約区分 (変動供給方式 など) に集中したこともあって、 推定の総平均販売価格は23.3p/l (約46.6円/ l) となり、 前年7月に比べて1割の低下となった。 ちなみに、 この価格は、 MM の前身のミルク・マーケティング・ボード (MMB) による販売価格 (94年7月、推 定総平均:23.9p/l) をも下回る水準である。 MMはこの結果について、 乳業者が 今後もポンド高が続き、 ポンド表示の介入価格がさらに下がると見込んで、 長期 契約を嫌ったためとしているが、 いずれにせよ、 申込数量が供給予定数量を大幅 に上回ったMM発足当初の入札とはうって変わった結果となった。 MMによる生乳落札価格の推移 注1:今回から、契約区分は少なくなった(96年7月は5区分) 2:94年7月はMMBによる販売であったため、契約区分が設定されていなかった。
MMによる生乳落札数量
MMの97年の生乳供給量は、 1日当たり約1万8千トンとみられる。 一方、 4 月〜9月までの6カ月間の販売契約数量は、 1日当り平均約1万トンであり、 そ の他の契約分とあわせても同約1万4千トンとなっている。 このため、 その差で ある1日当たり約4千トンの生乳は、 短期市場で販売されることとなり、 既に4 月分の売り出しが始まっている。 今回の入札結果は、 前年と同様、 価格においては安価仕向、 また契約期間にお いては短期仕向の傾向がみられる。 これは、 先行きの生乳販売価格の低下をある 程度折り込んだ動きとみられることから、 生乳取引が市場原理の中に着実に組み 込まれてきたことを示している。
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