国内酪農の保護を強化 (インドネシア)



● ミルクレシオの引下げを決定


 インドネシア農業省、 乳業各社および生乳生産者団体の3者は、 97年上期にお けるミルクレシオを1:1.7に改訂することで合意した。 これは、 2期連続の引 下げ (国内産業保護の強化) となり、 94年下期 (1:1.6) 以来の低い水準とな る。 ミルクレシオは、 生産基盤の弱いインドネシア国内の酪農家を保護し、 国内 の生乳生産を拡大するための制度であり、 97年上期の1:1.7は、 1.7リットル相 当の乳製品 (生乳換算、 チーズを除く) を輸入するためには、 1リットルの国産 生乳を購入することが義務付けられることを意味している。

● 2005年には制度廃止


 農業を取り巻く状況は厳しさを増しており、 ミルクレシオのような国内農業保 護策の非関税障壁に対する風当たりは非常に強い。 同制度に関しては、 対インド ネシア最大の乳製品輸出国であるニュージーランドとの2国間交渉が94年1月に 行われ、 (1)2000年に制度の見直しを行った上で、 2005年にはこれを廃止するこ と、 (2)94年上期の水準 (1:1.6) 以下には引き下げないこと、 が合意されてい る。

● 一時は輸入拡大にシフト


 インドネシアの生乳生産は、 政府の酪農振興政策にもかかわらず、 5%程度の 伸びに留まっている。 その一方で、 乳製品に対する需要は、 経済成長に伴う国民 の購買力の向上を背景として、 毎年20%近く増加している。 このため、 政府は、 急激に増加する需要を賄うべく、 一時は乳製品の輸入拡大を容認し、 95年下期に は、 ミルクレシオを1:2.9にまで引き上げた。 しかし、 これによる乳製品の輸 入量の増大は、 乳業メーカーの輸入への依存度を高め、 国内の生乳生産の拡大を 阻害することとなった。

● 国内酪農保護に転化


 このため、 政府は、 同制度の本来の目的である国内酪農に対する保護効果を発 揮させるべく、 一転して、 ミルクレシオを1:2.4 (96年上期)、 1:2.0 (96年 下期) と引き下げた。 今回の引下げも、 この政策の延長線上にある。 しかし、 国 内生乳生産量の2.3倍程度の乳製品の輸入によって需給のバランスが維持されて いた中で、 今回決定されたミルクレシオは低すぎるとの見方もある。  このことから、 国内の生乳生産が期待通り増加しない場合には、 今回、 定めら れたミルクレシオが早急に見直され、 輸入が拡大される可能性も十分考えられる。 いずれにせよ、 乳業各社にとっては、 今後、 乳製品の需要増加に対応した生産拡 大を実現するために、 国産原料乳の確保が最も重要な課題となろう。
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