鶏卵価格安定対策を実施へ (タイ)



● 特有の周期変動を示す卵価


 年間を通して平均気温の高いタイでは、 鶏卵の生産量が気候の影響で変動しや すい。 気温が比較的高く、 かつ、 湿度が非常に高い7月から8月の雨季の期間に は、 鶏卵の生産が減少し、 卵価は上昇する。 しかし、 その後、 雨季が明け、 気候 が冷涼になる年末にかけて徐々に卵価は低下する。 この卵価の動向に、 学校の休 暇などによる需要変動が影響を及ぼし、 独特の卵価変動パターンが毎年繰り返さ れている。

● 香港向け輸出の減少が価格低下を招く


 96年も、 年末に向かって供給量が増加し、 卵価は緩やかに低下していた。 しか し、 年末まで1個当たり1.63バーツであった鶏卵の農家出荷価格は、 97年に入っ てから急速に低下し、 わずか4週間で19%も値下がりした。 これは、 タイ産鶏卵 の主要な輸出先である香港市場に低価格の中国産鶏卵が大量に流入したため、 香 港向け輸出が大幅に減少し、 行き場を失った鶏卵が国内市場にあふれ、 一気に卵 価が下落したためと推定されている。

● 卵価安定基金の創設を検討


 タイでは、 93年に、 卵価の大暴落に見舞われた際、 生産規模の小さい中小農家 の多くが廃業に追い込まれた。 生産コストの低い大規模農家や企業が生き残り、 現在、 鶏卵の生産を続けている。 しかし、 現在の生産コストは、 1.44バーツ/個 と言われており、 今の卵価は非常に厳しい水準である。 鶏卵生産者は、 政府にこ の窮状を訴え、 何らかの対策を講ずるよう要望した。 これを受けたタイ政府は、 低温倉庫を建設し、 卵価が低落した際に、 調整保管を行って卵価の変動幅を縮小 させることを検討している。 また、 1.35バーツを目標価格とした卵価安定基金の 創設に向けて具体的な検討に入っている。

● 国内市場での地道な努力が鍵


 タイ鶏卵にとって主要な輸出先であった香港は、 中国への返還を控えており、 返還後の状況については不透明な部分が多い。 今後、 タイの鶏卵業界は、 香港に 代わる新たな市場を開拓できなければ、 タイ国内市場のみを相手にせざるを得な くなる。 しかし、 既に1人当たり年間150個近くの鶏卵を消費しているタイの国 内市場では、 今後、 爆発的な国内需要の伸びは期待できない。 したがって、 タイ 鶏卵業界は、 生産調整の実施や国内消費の拡大など、 地道な努力を行わざるを得 ないと思われる。
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