◇絵でみる需給動向◇
96年の秋から回復に転じたEU域内のバター価格は、 その後も一貫して上昇を 続けている。 EUのバター指標価格の一つとされているオランダの取引価格 (ブラ ンドバター) の動きをみても、 97年6月には7.19ギルダー (428円) / kgに達し、 底値であった96年9月の6.6ギルダー (393円) /kgに比べ9 %も上昇しており、 バター価格が高値にあった95年末の水準 (7.3ギルダー /kg) に迫っている。 ◇図:バター価格の推移◇
一方、 97年1〜4月におけるバター生産量は、 前年同期比3.6%減の57 万トンにとどまっている。 これは、 生乳生産がクォータ制度の下、 ほぼ前年並み の水準で推移しているものの、 輸出需要の好調な全粉乳生産の伸びが目立ってい ることや、 引き続きチーズ生産が増加していることから、 その煽りを受けるかた ちで、 バター生産が減少しているためである。 国別の生産量をみると、 全体の6 割近くの生産を占めるフランス、 ドイツで、 それぞれ4. 0%、 9. 2%下回 ったことが全体の減少に大きく影響している。 さらに、 生乳生産のピークに当た る5月の生産量も、 わずかに回復に向かうものの、 前年同月比2〜3%減となっ て、 前年を下回ると見込まれている。 主要国別バター生産量(97年1〜4月) 資料:ZMP (注)1 97年の生産量は暫定値 2 前年同期比は、閏年調整後の増減率
また、 域内のバター消費量は、 ほぼ前年並みの水準で安定的に推移していると みられているが、 輸出量は、 ロシアの生乳生産がさらに減少していることによる バター不足から、 同国向けを中心に増加傾向にある。 このような状況から、 7月 上旬の民間在庫量は前年同期に比べ5万トンも減少していると言われている。 なお、 先頃、 ドイツ市場価格情報センター(ZMP社) が作成した97年通年の域 内のバター需給見通しによれば、 生産量は2.4%減の184万トン、 域内消費 量はほぼ前年並みの174万トン、 輸出量は21%増の24万トンに達すると見 込まれており、 97年末の在庫量は10万トンと、 バターの国際需給が逼迫した 95年末とほぼ同水準になるとみられている。 EUのバター需給見通し 資料:ZMP (注)1 96年の数値は暫定値、97年は見込値。 2 バターオイルを含む。
このように、 今後のEU域内のバター需給は、 ロシア向けを中心とした輸出動向 が重要な鍵を握っているとみられている。 しかしながら、 ロシアの生乳生産が、 今後、 急速に回復することは困難とみられ、 輸入需要は引き続き強いと見込まれ る一方、 EUの生乳生産は秋から冬にかけて端境期に向かうことを勘案すると、 域 内のバター需給は、 今後ひっ迫の度合いを強めるとみられている。 このため、 価 格はさらに上昇する可能性もあることから、 その動向が注目されている。
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