家畜輸送規則緩和の追加条件を提案 (EU)




家畜輸送時間は基本的に8時間以内に制限

 EUの家畜輸送規則については、 動物愛護向上に対する世論の高まりを背景に、 
2年以上にわたる議論を経て、 95年6月にその内容が改正された (理事会指令
95/29) 。 

 これによれば、 通常の輸送車両で家畜を輸送する場合には、 輸送時間は基本的
に8時間以内に制限され、 連続して8時間を超えて輸送する時は、 家畜を一時下
車させ、 24時間の休息を取らなければならないと定められた。 その一方で、 特
定の条件下で家畜を輸送する場合は、 次のとおり輸送時間の制限を緩和すること
ができるとされた。 

・牛、 豚などの子畜:1時間の休息 (給水、 給餌を含む) を取る場合には、 最長
 9時間までの輸送時間の延長が認められる。 

・豚:常時給水を行う場合には、 最長24時間までの輸送が認められる。 

・馬:8時間おきに給水を行う場合には、 最長24時間までの輸送が認められる。 

・その他の家畜:1時間の休息を取る場合、 最長14時間までの輸送時間の延長
 が認められる。 


EU委員会、 輸送時間延長の具体的条件を提案

 しかしながら、 これらの輸送時間制限の緩和を実行に移すための車両設備等に
関する具体的な条件については、 動物愛護政策に関して推進的なイギリスや、 逆
に慎重なフランスやイタリアなど、 加盟国相互間で意見の相違もあって、 今日ま
で成果がまとめられていなかった。 このため、 今年6月4日,EU委員会は、 これ
らの具体的条件について次のとおり提案を行った。 

1 敷料

・除去可能な材料で清潔、 快適なものを使用する。 

2 給餌

・畜種、 月齢に適した十分な飼料を給餌する。 
・飼料が汚染されないための措置を講じる。 
・液状飼料の混合装置を携行する。 
・飼槽等を設置する。 

3 通路

・おのおのの区画にドア等を設置し、 または輸送中の家畜管理が行えるスペース
 を確保する。 

4 換気

・温度調整が可能な換気装置 (最低150立方メートル/時間/床面積1uの換
 気能力) を備える。 

・内外温度を運転室で確認できる設備を備える。 

5 仕切り

・区画は個別に仕切る。 

・家畜が動ける十分な広さで、 畜種、 大きなおよび頭数により調節可能な設備を
 備える。 

6 給水

・給水装置を設置する。 
・豚を輸送する場合には、 200リットル以上の給水用タンクを設置する。 


今後も動物愛護の世論が畜産経営に影響か

 EUでは、 動物愛護問題に対する関心が高く、 これまでも豚などの飼養管理規則
が定められ、 これらは畜産経営に少なからず影響を及ぼしている。 

 なお、 特に、 イギリスなどを中心とした動物愛護の向上を求める世論を背景と
して、 輸送中の家畜の管理ばかりでなく、 飼養管理などの面でも、 今後、 さらに
基準の強化を求める声が出される可能性もある。 



元のページに戻る