厳しい経営が続く養豚農家(タイ)
通貨下落で豚肉消費が減退
タイでは、近年の急速な経済成長を背景として豚肉消費量が増加傾向で推移し
ていたことから、豚飼養頭数が増加しており、96年においては約870万頭、
前年比1.7%増となった。しかしながら、97年7月以降、通貨バーツの下落
により、消費者の購買力が低下したことから、豚肉の消費が減退しており、バン
コク市場での98年1月の豚肉の卸売価格は、平均36.5バーツ/kg(1バー
ツ=約2.7円)で前年比30%安と大幅に下落している。また、このことによ
り、バンコク市内の多くの食肉処理工場は、経営不振に陥っており、閉鎖に追い
込まれる所も出てきている。
コスト増にあえぐ養豚農家
さらに、生産現場を見ると、ある養豚農家では、消費減退の影響を受けて、子
豚の販売価格が通貨下落以前は1,000バーツ/頭以上であったものが現在2
00バーツ/頭程度へと暴落した。その一方で、生産費の約6割を占める飼料の
価格については、通貨下落以前は10バーツ/kgであったものが、現在14バー
ツ/kgへと4割もの上昇となった。このため、同農家においては、繁殖母豚頭数
を減少させるなど、損失を最小限に押さえる努力をしているとのことである。し
かし、子豚価格の暴落にもかかわらず、飼料代などの生産資材価格の高騰から、
肥育農家の中には、現に経営を中止した者もあると伝えられる。
期待される政府援助
このような状況の中、タイ商業省国内通商局は、昨年末より豚肉の調整保管を
行うための補助金1億5千万バーツを要求していたが、このたび、農家救済政策・
措置委員会は、1)実施可能期間は98年1月から12月15日まで、2)実施
頭数は5万頭、3)生体換算での売払い予定価格(目標価格)は35.2バーツ
/kg、の条件でこの補助金を認可した。
しかしながら、依然として同国の経済状況は極めて厳しく、国家予算をも大幅
に切りつめなければならない状況となっていることから、同国の業界では、この
補助金が実際に執行される見込みは低いものと見られている。同国の養豚農家は、
政府からの補助がなければ、今後も厳しい経営が続くものと予想されている。
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