◇絵でみる需給動向◇
欧州統計局は、先頃、98年 6 月時点の牛飼養頭数を発表した。これによると、 EUの総飼養頭数は、前年同期比0.8%減(72万050千頭減)の8,509万7千頭となっ た。90年代に入ってからの総飼養頭数の動きをみると、91〜93年は減少傾向、94 〜96年はほぼ横ばいで推移したものの、97〜98年は再び減少局面となっている(資 料19ページ参照)。 総飼養頭数が2年連続で減少した要因としては、乳用牛の長期的な減少傾向が 挙げられるが、加えて、96年にイギリスで発生した牛海綿状脳症(BSE)問題に伴 う防疫上の淘汰や、これによる牛肉消費の減退から過剰対策として実施された子 牛のと畜奨励事業(Calf Processing Premium)も影響したものと考えられる。
国別の増減をみると、飼養頭数が1千万頭を超えるフランス、ドイツ、イギリ スの上位3国では、それぞれ2,052万3千頭(1.8%減)、1,517万頭(2.8%減)、 1,149万2千頭(0.8%減)と軒並み減少しており、全体の頭数減に大きく影響し ている。 一方、4〜6位に位置するアイルランド、イタリア、スペインでそれぞれ2.3%、 0.3%、6.0%増加した。特に、スペインでは、国内消費が順調なことなどから増 産意欲が強まっているとみられ、肉用経産牛が9%強増加するなど大きな伸びが 見られた。また、輸出振興に力を注ぐアイルランドでは、BSE問題以降厳しい経営 環境の中にありながら、 7 年連続の頭数増を記録した。
乳用経産牛と肉用経産牛の頭数レベルは、将来の飼養頭数を予測する上で重要 なカギを握っているが、乳用経産牛は前年同期比1.7%減少したのに対し、肉用経 産牛は2.6%増加した。このような傾向は、90年代に入ってからほぼ一貫した傾向 である。乳用経産牛の減少は、生乳クォータを拡大できない状況の下、1頭当た りの乳量が増加していることに起因している。一方、肉用経産牛に関しては、繁 殖雌牛奨励金制度(Suckler Cow Premium;肉牛生産者の所得を補償するため、母 乳で子牛を育てる雌牛を対象に奨励金を交付する制度。ただし、交付上限頭数が 設定されている。)が、結果として増頭を促す効果があったものと考えられる。 また、全体の飼養頭数に占める乳用経産牛および肉用経産牛の割合をみると、 それぞれ25%、14%となっており、10年前(88年)の31%、10%から両者のシェ アは徐々に近づきつつある。なお、これを国別にみると大きな差異がみられ、ド イツ、イタリア、オランダなどでは圧倒的に乳用経産牛の割合が高いのに対し、 フランス、アイルランドでは、両者はほぼ拮抗している。また、スペインでは、 肉用経産牛が乳用経産牛を大きく上回っている。
また、同時に発表された98年におけるEUのと畜頭数は、2,858万 7 千頭で前年 比3.0%の減少が見込まれている。さらに、98年 6 月時点の飼養頭数がわずかに 減少していることから、99年のと畜頭数も0.4%減の2,847万2千頭になると予想 されている。 EU主要国の牛飼養頭数(98年 6 月) 資料:欧州統計局 注:数値は暫定値
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