EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生乳生産量は前年度並み


全体ではクオータ数量を1%上回る見込み

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、84年からEU域内の乳製
品需給を調整するため導入された生乳生産割当(クオータ)制度(国別に生産枠
を設け、割当量を超過した場合には課徴金(注)を課す制度)に基づく97/9
8年度(4月から3月)のEU15カ国の生乳生産量(乳業メーカーへの出荷ベ
ース)は、前年度並みの1億1千3百万トン(暫定値)となった。

 クオーターベースの97/98年度の生産量は、前年度と同様に当該年度のク
オータ数量(15カ国で約1億1千6百万トン)を約1%上回るものとみられる。
これは、クオータ制度の下で出荷された生乳は、年度の終了後、乳脂肪率による
生産量の調整が行なわれることになるためである(クオータの消化率は、乳脂肪
率3.7%を基準として計算される)。

 生乳生産量が、クオータ数量を上回る見込みとなった理由としては、一部地域
を除き、全般的に粗飼料供給が順調に行なわれていることなどにより、一頭当た
りの泌乳量が前年に引き続き増加傾向にあることや、域内消費が依然として順調
なチーズなどの需要が増加し、域内の生産者乳価が全般的に好調であったことか
ら、酪農家の生産意欲を刺激したことが考えられる。


国別ではドイツ、イギリスなどが上回る可能性

 また、97年4月から98年1月までの主要国の生産量では、ドイツが0.4
%増の2,276万4千トン、イギリスが0.6%増の1,185万1千トンに
なった。最終的にクオータ数量を超過し、課徴金を支払う可能性がある国は、こ
れらの国に加え、オーストリアやフィンランドなどとなっている。なお、これま
で課徴金の徴収を怠っているとしてEU委員会に告訴されたイタリアおよびスペ
インは、これまでのところ、それぞれ0.5%、0.4%の減少となっている。

EU主要国の生乳生産量(97/98年)

 資料:ZMP 
 注1:暫定値
 注2:合計の数値は、97年4月から98年3月の数値、また、各加盟国の数
    値は97年4月から98年1月までの数値


今後のクオータ数量の増加が乳用経産牛の飼養動向に影響か

 こうした中で、欧州統計局発表の97年12月期の牛飼養動向調査によると、
EU15カ国の乳用経産牛の飼養頭数は、生産者乳価が好調であったオランダで
増加(1.9%増の167万8千頭)、スペインで横ばいとなった以外は各国で
軒並み減少し、前年同期比1.8%減の2,171万6千頭(暫定値)となった。
このうち、最も減少したのは、95年にEUに新規加盟したスウェーデンで3.4
%減の46万2千頭、また、最も飼養頭数の多いドイツやフィンランドが3.3
%減などとなった。EUの乳用経産牛の飼養頭数は、クオータ制度の導入や、乳
製品の介入価格を引き下げなどにより、近年では、一貫して減少傾向にある。

 しかしながら、今年の3月にEU委員会が発表した共通農業政策(CAP)の
改革案では、生乳生産クオータは、2001年度から2004年度までに2%の
増加(これにより全体で約1億1千8百万トンとなる)が提案されている。その
うち、1%は山岳地帯に、残りの1%は各加盟国に割り当てられる。また、各加
盟国割当分は、若年生産者への優先的配分が奨励されている。このようなことか
ら、これまで一貫して減少傾向にあったEUの乳用経産牛の飼養動向に何らかの
インパクトを及ぼすことも考えられる。

EU乳用経産牛の飼養頭数(97年12月期)

 資料:欧州委員会 
 注1:暫定値
 注2:ベルギーにはルクセンブルクを含む。


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