米国の豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○好調なNAFTA向け輸出


97年の豚肉輸出は前年比9%増

  米農務省(USDA)によると、97年の豚肉輸出量(枝肉ベース、以下同じ)
は、前年比9.1%増の47万1千トンとなった。

  豚肉輸出は、近年、輸出市場の需要拡大により2ケタ成長が続いていたが、9
7年はこれまでの拡大を支えてきた日本向けが不振であったことから、1ケタ台
の伸びへ後退した。  米国の豚肉業界では当初、日本向け輸出に関し、禁輸とな
った台湾産の代替需要を見込み、大幅な増加予測をしていたものの、@他の輸出
国との競争激化、A日本と米国の豚肉嗜好の相違または品質・規格の相違、B日
本の豚肉在庫の増加などの要因から、97年の日本向け輸出は前年を7.7%下
回る結果となった。

  しかしながら、日本に次ぐ第2、第3の輸出市場であるカナダやメキシコ向け
を中心に大幅な増加を示したことから、輸出全体では日本向けの減少が相殺され
ることとなった。

◇図:主要国別輸出割合◇


カナダ、メキシコ向けは33%増、49%増に

  カナダ向け輸出は、87年以降一貫して増加傾向を示しており、97年の輸出
量は、前年を32.8%上回る5万7千トンとなった。USDAでは、大幅増と
なった背景として、カナダの豚肉生産者が、取引価格が国内市場よりも魅力的な
輸出市場へ供給をシフトさせたことから、国内出回り量が品薄になり、米国から
の輸入が急増したとみている。

  また、メキシコ向けについては、94年末に起こった通貨危機から立ち直るに
つれて、食肉消費が急速に回復しており、97年の輸出量は前年比49.2%増
と大幅な増加を示した。メキシコ市場は、輸入豚肉の9割以上が米国産という独
占市場となっており、輸入物の大半は、ソーセージ用の原料であるとされている。

◇図:NAFTA向け輸出の推移◇


明暗分かれる98年NAFTA向け輸出

  USDAによると、98年のNAFTA(北米自由貿易協定)向け輸出見込み
について、カナダ向けは、カナダ国内での豚肉生産の増加が見込まれていること
などから、前年に比べ7%程度の減少になると予測している。

  一方、メキシコ向けについては、97年が前年比5割近い増加となったものの、
未だ94年の記録的水準には達していないことから、このまま経済安定が続くな
らば引き続き増加が見込まれるとしている。また、98年に入り、供給過剰から
米国内の豚肉価格が安値で推移していることが、一層の需要拡大につながるとみ
ており、98年のメキシコ向けは前年比15%程度の増加になると予測している。

  これまで、好調に推移してきたNAFTA向け輸出が98年では少し陰りが見
え始めることや、最近のドル高傾向による米国産の輸出競争力の減退など、輸出
への懸念材料が浮上する中で、米国の豚肉輸出の半数を占める日本市場の動向が
引き続き注目されている。


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