オーガニック酪農家の経営状況(デンマーク)


ほぼ同規模の従来型酪農家経営と比較

 デンマーク農業省の農漁業経済研究所は、このほど、同国の96/97年度の
オーガニック農家の経営調査を取りまとめた。調査対象は、5ヘクタール以上の
農地を有するオーガニック農家1,018戸(96年末)から抽出した158戸
のサンプル農家である。このうち、酪農分野では、オーガニック酪農に転換中の
農家48戸を含む82戸のオーガニック酪農経営と、平均経営規模がほぼ同様の
従来型酪農321戸について、比較検討されている。


泌乳量低下も高乳価で粗収入は従来型酪農を上回る

 まず、収益を見ると、高エネルギー飼料の制限などにより、経産牛一頭当たり
の泌乳量は6,400kgと従来型酪農より1割ほど低いが、乳価が従来型酪農
(2.4クローネ/kg。1クローネは約19円)を約0.5クローネ(転換済
み経営では0.5〜0.8クローネ)上回っているため、経産牛1頭当たりの生
乳販売金額は、従来型酪農を約2,500クローネ上回っている。この結果、1
戸当たりの農業粗収入では、従来型酪農を約20万クローネ上回る160万クロ
ーネとなっている。


単収低下で経産牛1頭当たりの飼料畑面積は4割増し

 その一方で、オーガニック酪農は生産に係るコストも高い。オーガニック酪農
では、高い飼料自給率が求められる一方で(85%)、化学肥料の使用制限など
から単収が低下するため、経産牛1頭当たりの飼料畑の面積が0.92ヘクター
ルと従来型酪農に比べて約4割広い。飼料コストの上昇は、オーガニック酪農経
営が肉用雄子牛生産を中止する理由にもなっている。

 また、オーガニック酪農への投資額は、従来型酪農の25万2千クローネに対
して、46万4千クローネとなっている。これは、牛のつなぎ飼いの中止、飼料
畑の単収の低下による畑の購入など、オーガニック酪農への転換に伴う投資の必
要性を示している。


補助金を除く単位時間当たりの労働所得は従来型酪農とほぼ同様

 その結果、農業粗収入からコストを差し引いた1戸当たりの農業所得は50万
クローネで、従来型酪農との差は、約7万6千クローネに縮まっている。しかも、
これにはオーガニック農業に対する補助金が6万6千クローネ含まれている。こ
の他、労働所得などは、オーガニック酪農が上回っているが、補助金を差し引い
て比較すると、労働所得は90クローネ/時間となり、従来型酪農とほぼ同様と
なる。また、農外収入や金利負担は従来型酪農に比べると高くなっている。以上
を総合すると、1戸当たりの農家所得は34万4千クローネで、従来型酪農を5
万7千クローネ上回っている。

 なお、デンマークデイリーボードが取りまとめた昨年の年報によれば、オーガ
ニック酪農家は430戸で、国内の飲用乳市場の15%を占めるとされている。



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