ケアンズ・グループ、一層の農業貿易自由化を確認


輸出補助金の撤廃、市場開放、国内補助の削減などを要求

 4月2日から3日にかけて、主要農産物輸出国で構成するケアンズ・グループ
による閣僚会議がシドニーで開催された。会議では、世界貿易機関(WTO)の
次期農業交渉に向けて、農産物の一層の自由化を求める共同声明が発表された。

  豪州のフィッシャー副首相兼貿易相は、ケアンズ・グループとして、輸出補助
金の撤廃、市場開放、国内補助の削減の三つを中心に要求していくことを確認し
たとしている。

 @輸出補助金については、これを正当化できる理由はなく、市場を歪曲させる
ような、不公正な輸出政策は早急に改善されなければならないとしている。

 A市場開放については、農産物も工業製品など他の品目と同列に扱われるべき
であるとした上で、関税の大幅な削減と、すべての非関税障壁について例外なき
撤廃を求めていくとしている。

 B国内補助については、先進国などを中心に、農業に対する政策的な国内補助
水準は他の産業に対するものを大きく上回っており、97年の経済協力開発機構
(OECD)諸国での国内補助は合計で2千8百億米ドルにも上ると指摘し、大
幅な削減が断行されなければならないとしている。


EUやわが国の動きを強く意識

 声明のなかで、食糧安保に関しては、農業への過剰な保護が見られる多くのケ
ースでは、自然破壊などの環境問題が生じているとした上で、自由貿易下での市
場に基づいた農業生産にこそ、多様で信頼のできる食糧供給を確保できる可能性
があるとし、むしろ世界的な規模からの食糧安保を強調している。具体的な国名
を挙げていないものの、これはEUやわが国の動きを強く意識したものといえる。


豪州自身がグループ内に抱える問題も

 今回の声明は、次期農産物交渉に向けて、自由で公正な農業貿易を掲げるケア
ンズ・グループの中でも、自由化強硬派の豪州の姿勢を明確に反映しているとい
えるが、豪州自身がグループ内に抱える問題もある。

 豪州は、検疫を理由に、カナダ産鮭、ニュージーランド産リンゴ、また生鮮鶏
肉の輸入規制を行っている。カナダ産の鮭に関しては、昨年2月にカナダが報復
措置として、豪州産牛肉の関税割当の削減を持ち出すなど両国間での外交問題に
発展していた。カナダは、従来から豪州の生鮮鶏肉などの検疫制度にも疑問を呈
してきた。今回の会議でも、市場開放については強制力が必要だとし、豪州をけ
ん制している。

 WTO次期農業交渉は、2000年に開始予定とされているが、それまでに豪
州が内なる矛盾をどのように克服していくのか注目される。


用語解説

ケアンズ・グループ

 農産物貿易の自由化を求める農産物輸出国が、1986年に、オーストラリア
を議長国として、同国のクインズランド州ケアンズに集まったのが始まりである。


 これに属する国々は、米国・EUによる補助金付き輸出競争および輸入国など
の農業保護政策が農産物の国際価格低迷と農産物貿易の混乱を引き起こしている
との基本的立場から、農産物貿易の完全自由化の達成と、早急に取るべき緊急措
置として保護措置の削減を提案し、ガット・ウルグアイラウンドの農業交渉にお
いて大きな影響力を発揮した。

 なお、現在の参加国は次の15カ国である

 北米…………カナダ
 中南米………アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、パラグアイ、ウル
       グアイ
 大洋州………オーストラリア、ニュージーランド、フィジー
 アジア………タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア
 アフリカ……南アフリカ共和国

注)1998年2月にハンガリーが脱退、南アフリカが新たに参加

元のページに戻る