最近の豚肉需給動向(中国)


豚肉卸売価格が下落

 中国で最も重要な食肉として位置づけられている豚肉の卸売価格が、最近にな
って下落傾向を強めている。食肉供給の約7割を占める豚肉は、目覚しい経済成
長に伴うおう盛な需要に支えられて、94年以降の生産の伸びは二けた台を維持
してきた。95年末からは供給過剰による価格低迷が表面化したことから、調整
保管が行われた結果、97年には卸売価格が下落以前の水準に回復した。

 しかし、最近では再び下落の様相を深めており、中国で最大の豚肉生産量を誇
る四川省の成都肉類産品卸売市場では98年4月の冷凍枝肉および冷凍部分肉卸
売価格が、それぞれ前年同月比13.0%安の9.0元、18.2%安の13.3
元(1kg当たり、1元=約16.5円)となった。これは、近年では最安値を記
録した96年前半の卸売価格に迫る低水準となっている。なお、農業部(農業省
に相当)による4月の子豚、肥育豚および豚肉の小売価格調査(全国平均値)に
おいても、前年同月比で15〜19%安と大幅に低下している。

成都肉類産品卸売市場における豚肉卸売価格

 資料:中国商報


強い生産意欲、3年連続の豊作も一因か

 このような豚肉価格の軟化を引き起こした原因として、堅調な市況動向の下で
強い生産意欲による生産過剰状態が続いたことが挙げられる。豚肉の潤沢な供給
は、沿岸部の大消費地を中心として生鮮肉(冷蔵ないし冷凍処理を一切行わない
形態)需要の増大を支えてきた。しかし、この結果、大都市やその周辺地区にお
いて庭先養豚から企業養豚への移行が急速に起こり、最近、消費の伸び悩み傾向
が際立つ中で、豚肉の供給過剰を引き起こしているものと思われる。なお、96
年末の豚飼養頭数は前年比3.5%増の4億5千7百万頭となり、依然として増
頭傾向が続いていることがうかがえる。

 また、豚肉市況を軟化させている別の要因として3年連続の「豊作」が挙げら
れる。安価な穀物は、配合飼料の安定供給にも多分に寄与していると思われる。

豚飼養頭数・豚肉生産量の推移

 資料:中国統計年鑑
    注:飼養頭数は年末時点
 

今後の需給政策に注目

 今後も豚肉価格が下落を続けることになれば、国内貿易部(国内通産省に相当)
は調整保管を発動して価格安定を図ることも考えられる。従来の調整保管では、
冷凍品を市場隔離する方法が主に採られていたが、最近では生鮮品が好まれるこ
とから、生体豚での「保有」も併せて行われることが考えられる。近年、消費地
周辺には年間出荷頭数が10万頭規模の大型養豚基地が相次いで建設されている。

 豚肉を含む肉類の価格は市場経済の原理に委ねられているが、今後は、過剰生
産を来さないための需給調整方策が必要とされてくるものと思われる。


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