タイ、98年の乳製品輸入枠を公表


乳製品の消費は飛躍的に増大

 タイの生乳生産量は、生産の効率化などにより92年の22万8千トンから9
6年には2倍以上の47万4千トンに拡大した。しかしながら、順調な経済の発
展に伴い、牛乳・乳製品の消費が大幅に拡大したため、国内産生乳は大幅な不足
を来し、不足する乳製品の原料を主に豪州、ニュージーランドなどから輸入して
きた。92年に67万3千トン(生乳換算)であった乳製品の輸入数量は、96
年には初めて百万トン(同)を超えるまでに至っている。また、1人当たりの年
間牛乳消費量は、92年の14.7sに対し、96年には25.2sと飛躍的に
増大している。


通貨危機以降は需要が減退

 しかしながら、順調に拡大してきた牛乳・乳製品の需要は、97年7月の通貨
危機以降、経済の停滞および乳製品輸入価格の高騰による値上げなどによって低
下し、各乳業会社の販売実績も大幅に悪化している。

 また、98年3月1日から実施された生乳最低取引価格の10.5バーツ/s
から12.5バーツ/sへの引き上げ、ならびに政府の承認を受けた牛乳小売価
格の引き上げ時期の順延は、製造コストの上昇と利幅の縮小を招いて乳業会社の
業績を一層悪化させている。

 このため、一部の乳業会社では、今後の経済状況などを勘案して、これまでの
ような国内での販売が見込めないとの判断から、新規市場の開拓として、香港、
シンガポール、カンボジア、バングラデッシュなどの海外マーケットに販路を求
めてきている。


懸念される輸入割当の完全消化

 このような厳しい需給状況の中で、タイ政府は、ガット・ウルグアイラウンド
(UR)合意に基づく98年の脱脂粉乳、原料乳および飲用牛乳の輸入割当を公
表した。これによると、関税割当内の関税率は、脱脂粉乳が5%、原料乳および
飲用牛乳が20%となっている。なお、関税割当外の関税率はそれぞれ、203.
4%、44%および89.4%となっている。また、関税割当数量はそれぞれ8
8,000トン、2,300トンおよび26.5トンとなっている。

 一方、乳業会社は、乳製品の消費が減退し、販売見通しが立たない状況下にお
いて、バーツ安で割高となった乳製品原料の輸入を大幅に削減せざるを得ない状
況になっている。このため、今般公表された98年の輸入割当の一部は、需要が
回復しなければ、未消化に終わるものと見込まれている。



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