フィリピン、学乳事業拡充の動き


学乳事業、98年度予算が増額

 フィリピンでは、小学校に通学する児童に対する学校給食用牛乳供給事業を拡
充する動きがみられる。野党第一党であるラバン党の党首で、上院議会農業委員
長のアンガラ上院議員は、98年度予算に全国的な学乳事業として723万ペソ
(1ペソ=3.71円)を計上させることを明らかにした。

 フィリピンは、近年、経済成長率が5%を超える目覚ましい経済発展を遂げて
おり、96年においても6.8%と大きな伸びを示している。しかし、一人当た
り国内総生産(GDP)は、95年にやっと1千ドルを超えたばかりで、96年
でも1,162ドルと、東南アジアで一番高いシンガポールの約30分の1に過
ぎない。畜産物の消費量もまだ低水準にあり、95年の牛乳・乳製品の1人当た
り消費量は、生乳換算で21.1sと、日本の4分の1程度となっている。

 また、貧富の差が大きく、学校に通学できても、朝食をとってこれない児童や、
貧困により食事を満足にとれない子供の栄養不良が大きな問題となっている。ア
ジア開発銀行の資料によると、0歳から6歳までの子供の8.4%、7歳から1
2歳までの子供の7%が栄養失調であると言われており、かなり深刻な状況とな
っている。


事業拡充の主目的は栄養不良と飢えの解消

 このためフィリピンでは、97年より民間慈善団体が中心となって、一部地域
で実施されていた学乳事業を、教育文化スポーツ省の後援による全国規模での事
業に拡充し、小学校通学児童の栄養状態の改善を目指してきた。昨年は8地域の
12以上の主要都市で、義務教育となっている小学校の1年生を対象に、6ヵ月
間、1日1パックのLL牛乳を無償提供した。今般、計上される予算では、16
地域の1,000校の小学校を対象に、児童1人当たり5ペソで、120日分の
補助を行うものとなっており、対象児童数などが昨年に比べて大幅に増えること
となる。

 フィリピンでは、貧困による子供の栄養不良をいかに解決するかは長年の課題
となっており、今回の事業拡充は、数百万人いるとされる児童の栄養不良と飢え
を解消するものとして、その実施が大いに期待されている。



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