米国の鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○ブロイラーの輸出拡大も鈍化の兆し


97年は前年比5.5%増に

 米農務省(USDA)によると、97年のブロイラー輸出量(可食処理ベース、骨付
き、以下同じ)は、前年比5.5%増の211万 6 千トンとなった。

 米国のブロイラー輸出は、90年代に入りロシアや香港の2大市場の需要に支え
られ、毎年2ケタ成長を遂げる飛躍的な拡大を示してきたが、97年はこれまでの
拡大基調に鈍化の兆しが見え始めている。

◇図:ブロイラーの輸出量の推移(輸出量)◇

◇図:ブロイラーの輸出量の推移(前年比)◇


増加が続くロシア向け輸出

 主要な輸出市場の動向を見ると、最大のロシア向けは、92年のソビエト連邦崩
壊後ロシア国内のブロイラー産業が大幅に衰退したことに加え、国内産よりも米
国産ブロイラーの方が安価であることなどを背景に、毎年驚異的な伸び率を示し
ている。米国のブロイラー輸出全体に占めるロシア向けの割合は年々拡大してお
り、93年の12.3%から97年の44.1%へと大きくシェアを拡張し、同年の輸出量は、
前年比9.4%増の93万4千トンとなった。

◇図:ロシア向け輸出の推移◇

 現在、ロシアでは、家きん肉輸出量のおよそ8割以上を米国産が占め、米国の
ほぼ独占的な市場となっているが、最近では、フランスやオランダを中心とする
EUからの輸入も増加していることから、今後はこれまでの拡大基調をそのまま
維持できるかどうか微妙なところである。


減少傾向のアジア市場向け

 第2の輸出市場である香港向けは、中国本土への中継地として発展してきたが、
近年、米国産ブロイラーの中国本土向け直接輸出が増加していることなどを受け
て、96年からは前年水準を下回って推移している。97年の輸出量は、前年比9.1%
減の39万7千トンとなっており、そのうち65%以上が本土への再輸出分となって
いる。

 また、日本向けについても、需要減退や日本市場を巡る他のブロイラー輸出国
との競争激化により、95年以降前年水準を下回っており、97年の輸出量は前年比
16.5%減の 9 万 2 千トンとなった。


好調なメキシコ向け輸出

 メキシコ向けについては、国内経済の安定化に伴う需要の拡大から年々増加し
ており、97年の輸出量は前年比13.8%増の11万3千トンとなり、日本市場に代わ
って 3 番目の輸出市場となった。USDAでは、メキシコ市場がNAFTAのスケジュー
ルに基づき2003年以降関税がゼロになることや、伝統的な丸どりから加工度の高
い部分肉の需要が年々高まっていることから、引き続き輸出の増加傾向が続くも
のと期待している。


競合国としてカナダを注目

 USDAでは、タイ、中国、ブラジルなどの従来のブロイラー輸出国に加えて、最
近ブロイラーの輸出が増加しているカナダに注目している。この背景には、昨年
カナダの輸出政策が変更され、各州でブロイラーの輸出管理が可能になったこと
が挙げられる。カナダからの輸出品目のうち、胸肉やナゲットなどの加工の高い
製品が増加しており、輸出市場についても米国と一部競合していることから、隣
国カナダの出現により、米国のブロイラー輸出は一段と厳しい競争にさらされる
ものと予想される。



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