EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○チーズ生産の伸びはこれまでより鈍化


97年は前年比0.7%増

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、97年のEU15カ国のチーズ生産
量(ヤギ、水牛の乳から作られたものを除く)は、各国によってそれぞれ増減が
あるものの、全体では前年比0.7%増の587万トン(暫定値)とわずかな増加にと
どまった。EUのチーズ生産は、過去5年間、生乳生産量が割当制度に基づきほ
ぼ横ばいの中で、主に生産の約9割を占める域内消費の好調に支えられて着実に
増加してきた。しかし、97年は、ここ数年間の伸び率(前年比1.5%〜3.6%増で
推移)に比べると、生産の伸びにも陰りが見えてきたと言える。

 これは、域内消費が家庭向けを中心に順調であった一方、97年の生乳生産量が
若干減少した中、ガット・ウルグアイラウンド(UR合意)に基づく補助金付きチ
ーズ輸出の対象金額および、数量の削減約約束の実施(95年度(7月〜6月)か
ら段階的に2000年度まで対象金額では36%、対象数量では21%の削減)により、
ロシアなどの域外向け輸出が停滞してきていることなどが影響している。米農務
省(USDA)では、97年のEUのチーズの域外向け輸出量は、前年比4.8%減の51万 
5 千トンとみている。

EUの各国別チーズ生産量(97年)

 資料:ZMP
 注1:暫定値
 注2:ヤギ、水牛から作られたものを除く。


昨年に引き続きドイツが最大の生産国

 また、各国別の生産量を見ると、ドイツが前年比3.9%増の159万トンとなり、昨
年と同様EU最大のチーズ生産国となった。96年、EU最大のチーズの域外向け
輸出国であった同国は、97年もロシアや中・東欧諸国向け輸出が好調で、前年比
18.9%増の14万4千トンを輸出した。国内でも電子レンジ用調理済み食品部門な
どからの需要が増加している。また、以前、最大の生産国であったフランスは、
ドイツには及ばないものの、国内消費および輸出が順調であったことから、前年
比0.9%増の152万トンとなった。なお、EUのチーズ生産量は、この両国で過半
数のシェアを占めている。

 これに対して、デンマークやスウェーデン、フィンランドの北欧諸国は、昨年
に引き続き減少することとなった。特に、かつて最大の域外向けチーズ輸出国で
あったデンマークでは、イランなどの中近東諸国向けのフェタチーズ輸出が減少
してきていることに加え、ロシア、中・東欧諸国の市場をドイツに取って代わら
れた。また、スウェーデン、フィンランドも95年のEU加盟により、域内諸国と
の競合にさらされている。


今後も域内消費がどの程度伸びるかがカギ

 EUの域外向けチーズ輸出は、今後、UR合意に基づくチーズ輸出補助金の削減
約束(98年度は数量ベースで36万 3 千トン、金額ベースで 4 億 4 千 3 百万E
CU(約620億円)の実施の影響により、さらに減少することが予想される。その
結果、EUは南アメリカや中・東欧諸国市場の一部を豪州やニュージーランドに
奪われるものとみられている。一方、業界関係者によれば、域内のチーズ消費は
南欧諸国を中心に依然として増加が見込まれるとしており、今後のEUのチーズ
生産の動向は、引き続き域内消費の伸びにかかっていると言える。



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