EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○総飼養頭数は引き続き増加(ドイツ)



前年同期比2.1%増

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、EU最大の豚肉生産国である同国
の97年12月期の豚総飼養頭数は、前年同期比2.1%増の2,478万2千頭となった。
同国の総飼養頭数は、近年、環境問題や生産資材価格の上昇などにより、減少傾
向が続いていたが、96年12月期の飼養頭数調査以降、97年4月期、 8 月期といず
れも前年同期を上回っている。

 また、繁殖用雌豚頭数は、経産、未経産頭数がともに増加したことから、2.4%
増の261万頭となった。繁殖用豚群も、96年12月期以降拡大傾向にあることから、
同国の肉豚の出荷頭数は、今後、さらに増加に向かうものと見込まれる。ZMPでは、
98年のドイツの肉豚出荷頭数は、この状況に加え、国内消費も回復が見込まれる
ことから、前年比 3 %増の3,830万頭と予測している。

ドイツの豚の総飼養頭数(97年12月期)

 資料:ZMP
  注:( )内は内数


豚コレラの影響の長期化が背景

 飼養頭数拡大の背景には、ドイツや同国の生体豚(子豚を含む)の最大の輸入
相手国であるオランダ(輸入量の約8割を占める)などで97年に豚コレラが発生
し、特にオランダでその影響が長期化したことが挙げられる。同年第3四半期ま
でのドイツのと畜向け生体豚の輸入頭数は、前年同期比58.3%減の80万6千頭と
なった。その結果、同国の統計局によると、97年の豚肉生産量(枝肉ベース)は、 
 2 %減の356万2千トンとなった。こうした中で、同年夏季の国内豚肉需要が旺
盛であったことから、豚肉価格が秋口まで全般的に好調に推移し、養豚農家の増
頭意欲を刺激することとなった。

 なお、ドイツの豚肉自給率は約8割であり、その不足分を主に生体豚の輸入で
補うEU最大の輸入国(96年には316万3千頭を輸入)である。豚コレラの影響の
長期化により、ドイツからは、オランダに次ぐ生体豚輸入相手国であるデンマー
クに代替の引き合いが急増することとなった。97年のデンマークの輸出頭数は、
前年比69.1%増の117万 5 千頭と大幅に増加し、そのほとんどがドイツ向けであ
った。


今年は再び減少か

 今後のドイツの豚飼養動向をめぐる環境は、あまり芳しくない。@オランダの
城内向け生体豚輸出が、3月初めのEU常設獣医委員会で条件付きながら可決さ
れ、近いうちに再開される見込みであること、A97年12月期の頭数調査で第2位
の豚肉生産国であるスペインが前年同期比3.8%増、それに次ぐフランスが3.0%
増など、EU全体の豚飼養頭数が依然として増加していることなどにより、昨年
秋から下落傾向にあるドイツの豚肉卸売価格が、さらに低落するとみられるから
である。また、今年に入り、北東部を中心に豚コレラが再発生し、現在、生体豚
の介入買上げなどが行われている(その上限頭数は子豚を含め4万頭)。したが
って、同国の豚総飼養頭数は、再び減少に転じる可能性がある。



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