海外駐在員レポート 

米国の畜産物需給長期見通し −98年農業観測会議から−

デンバー駐在員事務所  本郷秀毅、藤野哲也



はじめに


 米農務省(USDA)は、毎年、「農業観測会議」を開催して国内の短期的な農産
物の需給見通しを明らかにするとともに、政策推進上の課題などについて、USDA
からの説明に加え、ゲストスピーカーから意見を聞く会議を開催している。

 米国の農業政策を大幅に転換した96年農業法が成立してから、既に2年が経過
した。穀物生産部門においては、直接固定支払制度の導入や作付けの自由化によ
り市場志向性を強め、折からの穀物価格の高騰を背景とする輸出の拡大などから、
生産者に利益をもたらす結果となっている。USDAは、政策の関与を縮小する一方、
自由貿易の推進や輸出市場の開拓など貿易面での支援策に積極的に取り組む姿勢
を顕著にしている。

 昨年の東南アジアの経済危機の際にも、USDAは、輸出信用保証計画枠を迅速に
割り当てるなどの対応を採っている。とりわけ畜産物については、所得の向上に
よる消費の拡大が期待されることから、アジア向けを中心に市場の開拓が進めら
れている。このため、米国における中長期的な需給動向は、貿易相手国にも大き
な影響を与えることとなる。

 今月は、今年の会議において、USDAが示した2007年までの農業全般に関する長
期見通しの中から、畜産物の需給に関する部分について、その概要を紹介する。


1 長期見通し作成の前提条件


 長期見通しは、USDAの各部局の委員から成る農業観測委員会によって取りまと
められたものである。同委員会では、農業制度の枠組みや経済などについて、一
定の前提条件を与え、今後の需給状況などについて観測を行っている。

これらの前提の中には、

・米国および海外のマクロ経済状況(2007年までの実質GDP成長率は、米国で
 年平均約2.5%、世界全体では、約3.2%の成長率と想定。)
・米国の農業と貿易政策(96年農業法を2007年まで適用(農業法自体は96年から
 2002年までの基本政策))
・米国の輸出補助計画に係る資金規模
・米国と海外の農業生産性の動向
・気象条件(異常気象を除く。)

などが含まれており、これらについて、起こりやすい状況を想定(貿易政策など
については、原則として現状を踏襲)しつつ、今後10年間の見通しを策定してい
る。この見通しは、USDAが、農業予算の支出見込みや政策決定などの際に利用す
るもので、毎年見直しがなされる。

 なお、今回の見通しは、97年11月時点における諸条件を基礎として作成された
ものである。


2 畜産物需給に関する長期見通しの概要


(1)生乳生産

 酪農では、乳用牛飼養頭数は減少傾向で推移するものの、1頭当たり乳量の増
加により、生乳生産量は年1%前後の伸びで推移するものとみられる。実質乳価
の低下により、小規模層を中心とした酪農家の離農が進むものの、西部地域の生
乳生産は、伸びは鈍化するものの、今後とも拡大傾向で推移すると見込まれる。
また、北部地域でも、大規模化により生乳生産が増加するとみられる。

(2)牛肉生産

 牛の飼養頭数は、当面減少傾向で推移するものの、2000年にキャトルサイクル
は底を打ち、2007年には、 1 億 2 百万頭まで増加するものとみられる。キャト
ルサイクルのピークは、75年を頂点としてその後低下傾向で推移しているが、牛
肉生産量については、大型品種への移行やと体重量の増加により、飼養頭数の減
少を相殺している。牛肉生産は、フィードロットで肥育される去勢牛および未経
産牛がさらに大きな比重を占めることになると見込まれる。米国は、引き続き穀
物肥育牛の主要な輸出国としての地位を確保し、輸出量については、伸び率は鈍
化するものの、引き続き増加傾向で推移するものと見込まれる。

(3)豚肉生産

 豚肉の生産量は、2000年まで一貫して増加傾向で推移するものとみられる。ま
た、豚肉の主要輸出国では、環境問題により規模拡大が阻害されると見込まれる
中で、米国は、重要な純輸出国として、輸出を大幅に拡大するとみられる。経済
効率の観点から、今後とも、インテグレーションがさらに進展すると見込まれる。

(2)鶏肉生産

 ブロイラーの生産量は、今後とも引き続き増加傾向で推移し、また、輸出、消
費量とも堅調に推移するものと見込まれる。生産量の伸びは、2003年以降やや減
速するものの、それでも年3%前後の増加基調で推移するものとみられる。国内
需要が低いもも肉を中心として、国際市場における米国の輸出競争力は維持され、
一定の利益は確保できるとみられる。

表1 畜産物需給の長期見通し

 資料:USDA「LONG-TERM AGRICULTURAL PROJECTIONS TO 2007」
 注:1 酪農は、会計年度(10〜9月)
   2 牛肉および豚肉の需給は、枝肉ベース
   3 ブロイラーの需給は、可食重量ベース


3 畜産物需給全般に影響を及ぼす要因


(1)飼料穀物価格の変動が家畜の生産サイクルを左右

 95/96年の天候不順による記録的な穀物価格の上昇は、その後数年にわたって
畜産物全体の生産サイクルに影響を及ぼすこととなった。その後の飼料穀物価格
の値下がりにより、豚肉および鶏肉生産量は増加傾向に転じた。しかし、牛肉生
産については、収益性の悪化から母牛のとう汰が進んだことから、2000年まで減
少傾向で推移すると見込まれる。生産コストは、95/96年水準より飼料穀物価格
が低下することに加え、粗飼料生産の回復により、低減するものと見込まれる。
国内外の需要の増加に伴い収益性は好転し、全般的に生産意欲は高まるものとみ
られる。ただし、2000年以降は、飼料穀物価格が値上がりに転じることから、肉
用牛および家きん肉部門の生産の伸びは緩やかなものになるとみられる。


(2)2004年には家きん肉が食肉消費の約半分を確保

 可処分所得の増加に伴う食肉の実質価格の低下により、長期的には消費者の食
肉購買量は増加傾向で推移するものとみられる。食肉消費の伸びは、人口増加率
を上回り、 1 人当たりの年間食肉消費量は、2007年までに小売り重量ベースで2
29ポンド(約104kg)に達するものとみられる。食肉間では、国内シェアを巡って、
製品開発や広告宣伝などによる競合が繰り広げられるが、家きん肉は、他の食肉
に比べ、生産コストが安く、また、小売価格も安いため、消費量と支出額の両面
において、食肉全体の中で大きなシェアを占めるものとみられる。2004年には、
家きん肉が、食肉全体の消費量の半分を占めるものと見込まれる。

◇図1:1人当たり年間食肉消費量の推移◇


4 畜産物等の品目別需給予測


(1)牛乳・乳製品

@ 生乳生産量は着実に増加 

 生乳生産量は、わずかに増加するとみられるが、生産地域の移動は、80年代や
90年代初期よりもかなり緩やかなものになると見込まれる。粗飼料価格は、今後
とも強含みで推移し、飼料穀物の多給もコスト面から制限されると見込まれる。
このため、1頭当たり乳量の増加傾向は緩やかなペースとなり、生産者の飼養頭
数の拡大意欲も阻害されるものと見込まれる。

 乳用牛飼養頭数は、今後とも年1%前後の割合で減少して推移するものと見込
まれる。一方、1頭当たり乳量は、年1.5〜2.0%の割合で増加するものの、その
伸び率はやや鈍化するものとみられる。

A 酪農家戸数は引き続き減少

 実質乳価の低下により、小規模酪農家を中心として離農傾向は継続するものと
見込まれる。放牧形態を主体とする小規模酪農家は、今後とも存続すると見込ま
れるが、このような経営形態の多くが、次世代まで継続することは難しいものと
見込まれる。

B 乳製品需要はチーズを中心に増加

 乳製品の需要は、実質乳価の低下に加え、経済成長や人口増加により、緩やか
に増加するものと見込まれる。チーズや加工食品分野における乳製品の需要は今
後とも増加するものの、飲用乳の需要は停滞するものと見込まれる。

C 価格支持制度の廃止の影響は最小限

 乳製品の価格支持制度は、96年農業法に基づき、99年末に廃止されるが、制度
存続期間内に乳製品市場に実質的な影響を大きく与えることはないとみられる。
また、2000年からはローンレート制度が導入されるが、その役割は小さく、乳製
品市場に影響を与えることはほとんどないとみられる。乳製品輸出奨励計画(D
EIP)による乳製品輸出は、乳製品価格の下支えの役割は果たし得るものの、
輸出数量は、ガットで譲許された限度数量には満たないものとみられる。

D 乳製品の輸出は限定的

 乳製品の国際市場価格は、徐々に下落し、国内価格を下回ると見込まれる。こ
のため、商業輸出は、近隣諸国向けおよび米国の得意分野とするアイスクリーム、
モッツァレラチーズなどの付加価値製品に限定され、バターや脱脂粉乳のまとま
った輸出はほとんどないとみられる。

 生乳の農家受取価格は、インフレ率を下回るものの上昇傾向で推移することか
ら、生乳生産量は、国内需要を賄うのに十分な程度の緩やかな増加にとどまるも
のと見込まれる。小売り価格も同様に、他の産品価格の影響を受けるものとみら
れる。乳価は、微妙な需給バランスにより、以前にも増してより不安定なものに
なると見込まれる。

◇図2:生乳生産量と経産牛飼養頭数の推移◇


(2)牛肉

@ 牛群拡大は次世紀から
 95/96年の記録的な穀物価格の上昇に伴う子牛価格の低迷は、96年から97年夏
までの粗飼料の供給不足によってさらに悪化した。繁殖経営における収益性の低
下により、97年に母牛のとう汰が進んだことから、今世紀末まで牛群は拡大に転
じ難いものと見込まれる。97年の母牛1頭当たりの収益はほぼゼロとなったが、
98年には好転すると見込まれる。キャトルサイクルは、2000年に約 9 千 7 百万
頭と底を打った後、2007年には 1 億 2 百万頭に達すると見込まれる。ただし、
個体の大型化や牛の長期肥育によると畜時体重の増加により、生産量は増加する
ため、キャトルサイクルの山は以前と比較してそれほど高くなることはないとみ
られる。

◇図3:牛飼養頭数の推移◇

A 当面、生産は減少傾向

 牛肉生産量は、繁殖経営の収益悪化に伴う繁殖雌牛のとう汰を反映して、2000
年まで減少傾向で推移し、その後、徐々に増加するものと見込まれる。1人当た
り牛肉消費量は、当面の生産量の減少や2001年以降の輸出増および輸入減を反映
して、小売り重量ベースで、2007年には59.7ポンド(約27.1kg)と、97年に比べ
7.3ポンド(約3.3kg)減少すると見込まれる。また、子牛の大部分がフィードロ
ットへ導入されるため、子牛のと畜頭数は減少するものと見込まれる。

◇図4:牛肉需給の推移◇

B 育成期間は長期化

 肥育素牛は、穀物価格が比較的高価格となるため、これまでより放牧育成期間
が長期化され、フィードロット導入時の体重は増加するものとみられる。肥育牛
は、フィードロットで120〜140日間肥育され、枝肉重量は緩やかに増大するもの
と見込まれる。フィードロットにおける導入時体重が増加することおよび高品質
牛肉への需要が全般的に低くなることから、牛肉1ポンド当たりの飼料穀物給与
量は減少するものと見込まれる。ただし、チョイス級以上に格付けされる肥育牛
価格は、輸出向けおよび国内のレストラン向けの需要から、強含みで推移すると
みられる。

C 粗飼料基盤の拡大により生産が弾力化

  肉牛生産部門と農作物生産部門については、次世紀においても十分な土地基盤
が確保できるものと見込まれる。これに加えて、96年農業法に基づく生産弾力化
契約対象農地においての採草が可能となることから、粗飼料生産量は増加するも
のと見込まれる。また、併せて、3千万エーカー(約1千 2 百万ヘクタール)を
超える農地が、土壌の流出防止などを目的としている土壌保全留保計画(CRP)
の対象地として継続契約されるとみられるものの、干ばつや洪水といった非常時
には、今後とも採草が認められるものと見込まれる。以上のような粗飼料の生産
量の増加要因と、子牛の育成期間の長期化により、粗飼料の給与量と子牛の出荷
時期に柔軟性が維持できるようになろう。例えば、牧草不足時には、肥育素牛を
早期に出荷することにより、牛群の維持を容易にできるようになるものと見込ま
れる。

D 子牛肉の生産は引き続き減少

 子牛肉の生産量は、2007年まで減少傾向で推移するものとみられる。子牛肉生
産は、特定の仕様の下に飼料給与された、体重の比較的重いものが生産の主流に
なるとみられる。

 乳用牛飼養頭数の減少により、乳用子牛の生産頭数も減少するものと見込まれ
る。また、肥育素牛の価格が上昇すると見込まれるので、乳用子牛についても、
フィードロットへの流通が主体となり、子牛肉に仕向けられる割合は減少するも
のとみられる。

E グレインフェッド牛肉の輸出を拡大

 米国が、恒常的な牛肉の純輸出国に転じることができるのは、牛群の再構築が
行われ、かつ、環太平洋諸国の経済復興による輸入需要が回復する次世紀に持ち
越されよう。牛肉の貿易については、ガット・ウルグアイラウンド合意の実施な
ど、自由貿易への努力が引き続き行われるであろう。ただし、環太平洋諸国にお
ける長期的な食肉需要の伸びは、現在の経済危機により、当初予測よりも緩やか
なものになるとみられる。米国は、グレインフェッド牛肉の主要供給国としての
地位を確保するものと見込まれる。これらの牛肉は、ステーキ用またはロースト
用として、主に環太平洋諸国向けを中心に輸出量が伸びるものとみられる。豪州
やおそらくニュージーランドも、この地域への輸出を増加させるが、グレインフ
ェッド牛肉の生産は限られたものであり、輸出の中心はグラスフェッド牛肉にな
るものとみられる。一方、オセアニア諸国にとって、米国は依然として重要な輸
出市場となるであろう。

F 輸入は加工向けに限定

 輸入は、ハンバーガー向けなどの加工用牛肉が大半を占めるが、その輸入量は、
現行水準で推移すると見込まれる。


(3)豚肉

@ インテグレーションがさらに進展

 養豚部門は、今後ともインテグレーションが進展するものとみられる。今後10
年間においては、これらの大規模で効率的な経営を行う生産者が豚肉生産のシェ
アをさらに拡大すると見込まれる。大規模養豚経営体は、固定経費の節減や飼料
穀物の大量仕入れによるコストの低減などにより、効率的な経営が可能となるか
らである。なお、繁殖雌豚の飼養頭数は、1頭当たりの産子数の増加により、さ
らに減少するものとみられる。

A 生産は当面大幅に増加

 豚肉生産量は、枝肉ベースで97年の171億ポンド(約774万トン)から、2007年
までには199億ポンド(約904万トン)に増加するとみられる。95/96年の穀物価
格の上昇により、小規模養豚経営体の離農が加速したものの、穀物価格の下落に
伴う豚生産への切り替えや台湾の口蹄疫およびオランダの豚コレラの発生に伴い、
豚肉輸出が拡大するとの強気の見通しにより、大規模養豚経営体の生産が拡大し
たことから、98年の豚肉生産量は、前年比9%増、99年は 6 %増となると見込ま
れる。生産の拡大を受けて、収益性は低下し、99年および2000年には、収支がほ
ぼゼロに近くなるため、2001年以降飼養頭数は減少し始め、2004以降に再び増加
に転じるとみられる。しかし、インテグレーションの進展などにより、ピッグサ
イクルの変動はより小さなものとなり、豚肉生産量の伸びは、2004年以降、飼料
穀物の価格上昇や他の食肉との競合による収益性の低下から、緩やかなものにな
るとみられる。

◇図5:豚飼養頭数の推移◇

◇図6:豚肉需給の推移◇

B 輸出は台湾の口蹄疫発生により大幅増

 米国は、純輸出国として重要な地位を占めることになろう。豚肉輸出量は増加
傾向で推移するものの、逆に、輸入量はわずかに減少するとみられる。豚肉の輸
出量は、短期的には台湾の口蹄疫発生に伴い大幅に増加するとみられる。加えて、
長期的にも他の輸出国での環境問題の発生により、生産拡大が阻害されることが
見込まれており、同様の問題を抱える米国自らも環境問題に取り組む必要がある
が、その輸出量は増加するとみられる。米国の豚肉輸出は、主にメキシコなど環
太平洋諸国向けを中心に、今後も増加するものとみられる。なお、輸出量につい
ては、カナダ、デンマークといった輸出競合国の供給量や為替変動によって影響
を受けることになる。また、台湾については、2003年以降に輸出が再開されると
見込んでいるが、その輸出量は、口蹄疫発生前よりかなり少なくなるものとみら
れる。


(4)家きん肉

@ 低コストおよび健康志向による需要拡大

 家きん肉生産量は、食肉消費全体の中でシェアを伸ばしているブロイラーがそ
の牽引役となり、引き続き増加するものとみられる。家きん肉は、他の食肉に比
べて価格が安いため、結果的に1ドル当たりの購買可能数量も他の食肉より多く
なる。家きん肉産業は、積極的な市場開発を続け、脂肪が少なく、半調理食品な
ど便利な食品としてのイメージ作りを推進するものとみられる。また、より加工
度の高い家きん肉製品の開発も行われよう。七面鳥も、加工度の高い製品の国内
外の需要により、生産の拡大が見込まれる。

◇図7:ブロイラー需給の推移◇

A 生産は再び増加

 ブロイラー生産は、95/96年の飼料価格の値上がりにより、その伸びは一時的
に鈍化したものの、98年、99年は、再び前年をそれぞれ7.0%、5.5%上回るもの
とみられる。2000年以降は、収益性の低下からその生産拡大のペースは緩やかに
なるものとみられる。また、家きん肉価格は、低下傾向で推移するものと見込ま
れる。

B インテグレーションによるコスト削減は限界に

 家きん肉産業は、技術革新および優れた生産管理方法を取り入れたインテグレ
ーションによる効率的な生産規模の確保などを通じて、生産コストの削減に努め
てきた。今後とも、インテグレーションの動きに進展はみられるものの、過去10
年間のように、これらが著しいコスト削減に結びつくということはないとみられ
る。

C ブロイラー輸出はもも肉を中心に増加

 家きん肉の輸出は、他の輸出国との競合があるものの、緩やかに増加するもの
とみられる。また、ブロイラーについても、もも肉を中心に、輸出量の増加が見
込まれる。


(5)鶏卵

@ 安定的な生産・消費

 家庭消費用の鶏卵生産量は、収益性があまり良好でないことから、緩やかに増
加するものとみられる。一方、ブロイラー生産の拡大に伴うふ卵用鶏卵の生産量
が、その増加の大きなウエイトを占めるものとみられる。
 殻付き卵の消費は、減少傾向で推移するものの、消費者が冷凍食品などの簡便
性のある食品を求める傾向にあるため、調理済み食品の原材料の需要の拡大が見
込まれる。このため、1人当たり鶏卵消費量は、わずかに増加傾向で推移すると
みられる。

◇図8:鶏卵需給の推移◇

B 輸出は限定的

 米国の鶏卵輸出量は、多くの国において生産が過剰気味で推移するとみられる
ため、大きな変動はないものと見込まれる。なお、世界の輸入需要の動向につい
ては、多くの国において自給体制が整っているため、変動は少ないものとみられ
る。


(6)飼料穀物

@ トウモロコシの作付面積は拡大

 飼料穀物は、98〜99年には、生産が需要を上回るものの、2000年までには需要
が供給を上回るため、在庫水準は低下に転じるとみられる。特に、輸出需要の高
まりにより、飼料穀物生産の増加分の半分が輸出に仕向けられるとみられる。飼
料穀物の増産のほとんどは、トウモロコシの作付け面積の増加により賄われ、20
00/2001年度には、記録的な豊作となった94/95年度と同水準の生産量に達する
と見込まれる。96年農業法による作付けの自由化および減反計画の廃止などによ
り、トウモロコシと大豆の輪作農地は拡大傾向で推移し、コーンベルト地帯以外
での作付けも拡大するものとみられる。

 トウモロコシの作付けは、一貫して増加傾向を示し、2007/08年度には、8,45
0万エーカー(約3,430万ha)に達するものとみられる。

  トウモロコシの生産量は、2001/02年度までに、記録的な生産量となった94/
95年度並みの約101億ブッシェル(約 2 億 5 千 6 百万トン)を記録し、2005/
06年度には約110億ブッシェル(約 2 億 7 千 9 百万トン)になるものと見込ま
れる。

◇図9:トウロモコシ需給の推移◇

◇図10:トウモロコシの作付け面積と価格の推移◇

A 価格は2000年を底にV字反転 

 トウモロコシ価格は、生産量の増加により低下傾向で推移し、99年には2.55ド
ル/ブッシェルとなるが、2000年以降は、需給の引き締まりから価格は値上がり
に転じ、2007年には3.10ドル/ブッシェルまで上昇するものとみられる。

B 中国が純輸入国へ

 トウモロコシの輸出は、中国がトウモロコシの純輸入国に転じると見込まれる
ことから、大幅に増加するものとみられる。トウモロコシの輸出量は、2000年に
は24億ブッシェル(約 6 千 1 百万トン)、2007年には30億ブッシェル(約7千
7百万トン)に達すると見込まれる。

C 在庫率は5.7%まで減少

 トウモロコシの在庫は、今後数年は10億ブッシェル(約 2 千 5 百万トン)を
上回って推移するものの、需要量が生産量を上回って推移するとみられることか
ら、在庫率は2000年以降10%を下回り、2007年の在庫率は、トウモロコシで5.7%
にまで減少するものとみられる。


おわりに


 ウルグアイラウンド農業合意および北米自由貿易協定(NAFTA)により、
畜産物の輸出拡大を図っている米国農業は、今後、その輸出志向をより鮮明にし
てくるものと考えられる。

 長期見通しの中では、農産物全体の輸出額の伸びは、97年から2007年までの10
年間で年率3.9%と想定している。なかでも畜産物の輸出は、年率4.2%という高
い伸びを示すと見込んでおり、2007年には、97年より10億ドル(約 1 千 3 百億
円)増加し、175億ドル(約 2 兆 3 千億円)に達するとしている。

 こうした中、クリントン大統領は、昨年末、農業関係団体の強力な支持を背景
として、貿易のより一層の拡大を目指し、必死の議会工作によりファストトラッ
ク通商交渉権限の取得を図ったものの、自らの出身母体である民主党議員の反対
に会い、法案の採決を撤回するに至った。このような事態に対して、今後、米政
権がどのように対処するかが注目されるところである。

 いずれにせよ、米国の農業政策と畜産物需給の動向は、次期ラウンドにおける
交渉の基礎の一つとなることから、その動向を引き続き注視していく必要があろ
う。



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