BSTの安全性に関する報告を発表(FAO/WHO)


 

適正に使用されれば無害

 FAO(世界食料機関)およびWHO(世界保健機関)の合同専門家委員会(JECFA:
食品の国際規格を策定するFAO/WHO合同食品規格委員会(CODEX)の諮問機関で、
食品中の動物用医薬品の残留基準などについて、科学的な検討を行っている)は、 
3 月 5 日、牛ソマトトロピン(BST)は、適正に使用されれば消費者に無害であ
るとする報告を発表した。


しゅようなどとの関連性は無視できる程度

 BSTは牛の一頭当たりの泌乳量を10〜15%増加させる効果を有するホルモンで、
米国など20カ国以上で既に販売が許可されている。しかしながら、BSTの使用に伴
う最大の懸念は、これを投与した牛の牛乳(以下「BST乳」という)では、その他
の牛乳(以下「通常乳」という)に比べ、しゅようの発現に関係するインシュリ
ン様成長因子−1 (IGF− 1 )の含有量が増加するため、BST乳を飲むことによっ
てしゅようが発現しやすくなるのではないかという点にある。

 今回の報告では、BST乳の摂取量が常識の範囲内であれば、増加するIGF−1 の
量は、胃や腸管に通常分泌されている量に比べて、ごく少量であり、また、体内
での生産量に比べれば無視できる程度であるとしている。

 また、牛の泌乳量が増大すれば、乳房炎の増加が予測されるため、その生乳中
の抗生物質の残留問題も増加するのではないかといった、抗生物質の使用にまで
踏み込んだ懸念に対しては、米国を例に挙げ、BSTの使用が始まる前と後で、統計
上変化が無いと述べている。この他、BST自体がしゅようを発現させるウィルスを
活性化させるのではないかとの一部の見方に対しては、実例が無くあくまで推論
にすぎないとしている。

 これらの見解を踏まえ、同委員会はBSTの使用は消費者の健康には無害であると
述べている。また、乳量を増加させるための適正使用を前提とすれば、食品の安
全性から見て、この他に許容残留量を特定する必要がないとする、徒前からの意
見(92年)を再確認している。なお、この報告は、今後、CODEXで検討されること
となる。


EUでは、ホルモン牛肉に次ぐ問題に発展か

 EUでは、94年末から99年末までBSTの販売および使用が認められていない。この
間、BSTの影響を調査するとしており、その結果が今年 6 月末までに取りまとめ
られる予定である。今回の報告がこの報告に何らかの影響を及ぼすことも予測さ
れる。

 また、貿易面から見れば、エストロジェンやプロジェステロンなどの生殖ホル
モンを使用したいわゆるホルモン牛肉問題に次いで、BSTをめぐるホルモン議論が
一気に高まることも予想される。



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