豪州、再編進むと畜加工業界




と畜場の経営環境が悪化

 豪州のと畜加工業界は、米国などに比べ、依然、小規模で老朽化した施設が多
く、近年、世界的な牛肉の供給過剰などを背景に、業界の再編、合理化が進展し
ている。

 ニューサウスウェールズ(NSW)州では、この半年間に 3 ヵ所のと畜場が閉鎖
されており、過去 4年間でみると、NSW州では10ヵ所、クインズランド(QLD)州
では14ヵ所ものと畜加工場が閉鎖された。

 この要因としては、世界的な牛肉の供給過剰による輸出需要の停滞、また生体
牛の輸出が豪州全体のと畜頭数の 1割を超す水準にまで急増し、と畜牛の集荷が
困難になったことなどが挙げられる。特に昨年は、牛肉販売価格の低迷による逆
ざやから、操業の停止または縮小を余儀なくされた企業も出ており、経営環境は
かなり悪化していた。


施設の効率化・近代化が難しく撤退も

 さらに、昨年後半からのアジア経済の動揺によって、韓国向けや東南アジア向
け輸出が急減していることから、少ないパイをめぐってと畜加工企業間での価格
競争は厳しくなる傾向にあり、中小規模の非効率な施設を抱える企業は経営的に
極めて困難な状況に直面しているとされる。

 一方で、牛海綿状脳症や病原性大腸菌の世界的な発生により、国内外から食品
の安全性への要求水準は厳しくなる一方であり、老朽化したと畜場では、施設や
機具などハード面の改善が急務となっている。

 このような状況から、中小規模の老朽化した施設を有する企業は、施設の効率
化、近代化を迫られているものの、新たに莫大な投資が必要となるため、むしろ
これを機会に業界から撤退する例も多いとみられる。


アジア地域の経済動揺により合理化が加速

 業界内には、と畜加工業界の再編によって、国際市場での豪州産牛肉の価格競
争力が高まり、最終的には生産者にもその利益が還元されるとの意見もある。し
かしながら、既に全体の 6 割が 3 大企業によってと畜加工される米国を例にみ
ると、価格低迷時には決まって少数パッカーによる肉牛の価格支配がささやかれ
ており、豪州でもこのような懸念が持ち上がる可能性は否定できない。

 数年前までは、輸出認定と畜加工場でも、1日当たりのと畜頭数は平均で500〜
600頭程度であり、最大でも 1 千頭に満たなかったが、最近では 3千頭規模のと
畜場も計画されており、各と畜場ごとの一頭当たりの加工経費は、と畜施設の効
率に応じてその格差が拡大する傾向にある。従来より、販売価格競争は厳しくな
る一方であり、業界内では、と畜加工施設はさらに集約化されるとの見方が強か
ったが、アジア経済の動揺によってそのスピードは一層加速するものとみられる。



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