増産が急がれるインドネシアの生乳生産




自給率は35.8%に低下

 インドネシア農業省畜産総局長によると、同国における97年の生乳生産量は前
年比2.9%増の44万 7 千トン、乳牛頭数は同1.7%増の35万 3 千頭といずれも増
加しており、同国が進めている酪農乳業振興策が順調に進んでいることを示して
いる。しかしながら、消費量は、生産量の伸びを上回って増加しており、97年の
消費量は、同6.3%増の124万7千トンとなり、この結果、自給率は35.8%と昨年
の37.0%よりさらに低下している。

 これについて畜産総局長は、干ばつの発生により計画していた生産量を割り込
んだことと、通貨下落前の輸入量が大幅に増加したことが要因と説明している。


経済発展に追いつかぬ生乳生産

 同国における酪農業は、急速な経済発展を背景として牛乳の消費量が増加した
ことから、新規参入農家に対する乳牛の無償配布など、政府による特別施策の下
で拡大傾向で推移している。しかしながら、93年の 1 戸当たりの飼養頭数は3.4
頭と農家の経営規模は極めて小さい。また、飼養管理技術が未熟なため1頭当た
りの泌乳量も約 3 千トン(305日乳量)とかなり少ないことから、政府の計画に
反して生産拡大が進んでいない状況となっている。その一方で、牛乳の消費量は
急速に増加しており、その伸び率は生産量を上回っていることから、牛乳・乳製
品の輸入量は増加傾向で推移している。


国内生産の増加を期待

 97年後半からの同国通貨ルピアの下落により、国内では輸入品の価格が急上昇
しており、97年 7 月に6千ルピア(100ルピア=1.58円)で売られていた400gの
缶入り牛乳が、98年 3 月では 1 万8千ルピアとなるなど、小売段階においても
価格が急騰している。

 同国政府は、輸入品の価格引き下げを図るため、牛乳などの基幹食料の輸入に
対して、補助金を交付することを発表した。しかしながら、輸入価格の急上昇と
国産生乳の入手難に苦しむ乳業メーカーは、牛乳の国内の需要を満たし、安定的
な供給を図るため、さらなる国内生産量の増加を期待している。



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