環境問題が大きなカギを握る米・加の豚肉生産


 

主要国の豚肉輸出量は年率 4 %の拡大

 米国やカナダなど各国で環境問題が大きな関心を呼んでいる中、米農務省(US
DA)は、今般、「世界の肉豚生産:環境問題が抑制か」と題するレポートを発表
した。

 この報告によれば、世界の豚肉輸出は、@貿易交渉による輸出機会の増大、A 
1 人当たりの所得の向上、Bシェルフ・ライフの向上などの技術革新により近年
増加傾向で推移しており、主要輸出国の豚肉生産量は、89〜97年の間に年率 4%
の増加を示している。

 特に、米国、カナダ、デンマークおよび台湾の 4大輸出国の豚肉輸出量は、97
年において世界全体の約 6割のシェアを占める結果となっている(注:台湾は、
97年 3 月の口蹄疫発生により大幅に減少)。


米・加の環境規制が一層強化

  4大豚肉輸出国のうち、米国およびカナダについては、デンマークや台湾とは
異なり、広大な土地で、しかも人口密度の低い地域が比較的多く存在することを
背景にして、豚肉の生産基盤を拡大してきたが、近年の環境問題に対する国民の
関心の高まりにより、その優位性を発揮することが難しくなりつつあると報告さ
れている。

 米国では、ノースカロライナ州が昨年3月から、飼養頭数250頭以上の経営体に
おける豚舎等の建設を 2年間一時停止したのを始め、多くの州や郡において、ゾ
ーニング規制や大規模な養豚施設の建設を許可しないなどの豚肉生産の規制を設
ける動きが増加しつつある。

 また、カナダにおいても、米国と同様、近年、豚肉生産の大規模化や垂直統合
が進展しつつあることから、オンタリオ州やマニトバ州では、地域住民から環境
汚染への懸念が表明されている。特に、オンタリオ州の一部の地域では、養豚農
家の規模拡大や新規就農に対する許可をめぐる論争が続いており、規模を拡大す
る農家に対しては、家畜ふん尿の養分管理計画を義務付ける規則などが制定され
ている。また、サスカチュワン州やアルバータ州政府についても、養豚農家の規
模拡大などに対し関心を示しており、サスカチュワン州では環境アセスメントの
実施を義務付ける裁判所の判定が下されている。


将来の輸出国としてメキシコ、南米が有望視

 このような米・加両国における環境規制の強化は、両国の豚肉生産のコスト高
を招き、世界的な豚肉価格の上昇につながる一方で、現行の輸入国や生産コスト
の低い国における豚肉生産を促進することが懸念されている。このため、USDAで
は、衛生問題を克服するという条件付きながら、広大な土地を有し、豊富な穀物
飼料が確保でき、かつ、環境規制が緩やかなメキシコ、ブラジル、アルゼンチン、
ウルグアイなどの中南米諸国が、今後、有力な豚肉輸出国になり得るものと見込
んでいる。


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